国立精神・神経医療研究センターの研究活動・成果

バイオリソースを活用した共同研究実績

共同研究実績 平成27年4月1日調査時点 平成28年4月1日調査時点 平成29年4月1日調査時点
共同研究実施件数 26 38 61
共同研究機関数 企業 9 14 15
大学 42 47 59
その他 20 27 34

研究概要例

研究成果_精神・神経医療研究センター1
研究成果_精神・神経医療研究センター2

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バイオリソースを活用した研究成果(平成22年度以降、原著論文)

2017年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1Pathological active mTOR mutation in brain malformation with intractable epilepsy leads to cell-autonomous migration delay.
Hanai S, Sukigara S, Dai H, Owa T, Horike S, Otsuki T, Saito T, et al.
Am J Pathol. (in press) 国立精神・神経医療研究センター病院で、難治性てんかんの外科治療として半球離断術を受けた患者で、HME症例にmTOR遺伝子のミスセンス変異を脳特異的な体細胞変異として検出した。変異mTORベクター導入HeLa細胞では、巨細胞化を示し、MTORの下流分子S6と4EBP1のリン酸化亢進を認め、MTOR活性化を示した。E14.5マウス胎仔脳室内ベクター移植では、Wild-type mTORベクターと変異mTORベクター導入個体ではEGFP陽性細胞の巨細胞化に加え、皮質下層への貯留が見られ、その程度は患者変異mTORベクターを導入したマウス大脳皮質でより顕在化していた。
2Surface electromyogram and muscle ultrasonography for detection of muscle fasciculations in pediatric peripheral neuropaty.
Oguri M, Saito Y, Okazaki T, Matsumura W, Ohno K, Togawa M, Fukuda C, et al.
Brain Dev. pii:S0387-7604(17)30033-5. 2017.症例は両側の尖足、上下肢の腱反射減弱、音痛覚過敏、振動覚低下を認めた12歳女児。両測手指、右母趾外転筋と背側骨間筋の筋痙攣があり、上下肢で神経伝導速度が低下していた。筋電図は施行しなかったが、右下肢に、筋超音波検査で、表面筋電図と一致した0.2-0.4秒間持続する反復性、準規則的な筋痙攣を認めた。この所見は、慢性の神経再支配の際に見られる筋線維束攣縮に合致していた。神経、筋生検では、慢性の運動、感覚、自律神経ニューロパチーが示唆された。小児のニューロパチー患者で、筋線維束攣縮を、表面筋電図、超音波検査を併用して、非侵襲的に検出した初めての報告である。
3A Japanese male with a novel ANO5 mutation with minimal muscle weakness and muscle pain till his late fifties.
Kadoya M, Ogata K, Suzuki M, Honma Y, Momma K, Yatabe K, Tamura T, et al.
Neuromuscul Disord. 27(5):477-480. 2017.50歳代後半まで軽微な筋力低下、筋痛のみで経過していた、新規ANO5変異をもつ男性症例 肢体型筋ジストロフィー(LGMD)2Lタイプは、成人発症の進行性筋ジストロフィーでanoctamin 5 (ANO5) 遺伝子変異が関与しており、北から中央ヨーロッパで多く報告されている。今回アジアでは2例目となる新規ANO5ホモ変異c.2394dup, p.Arg799Thrfsを持つ日本人症例を報告する。 10年以上CK高値持続にもかかわらず、筋症状は筋強直と、筋けいれん、近位筋筋力低下と軽微であった。仮性肥大と画像上で大内転筋、腓腹筋の脂肪置換が認められていた。 このことからLGMD2Lは、従来から考えられているよりも多くの患者が潜在していると推測されるため、筋けいれんや筋強直など軽微な症状のみで明らかな筋力低下がなくても、CKの高値がある患者ではANO5変異を考慮すべきである。
4A novel mutation in the proteolytic domain of LONP1 causes atypical CODAS syndrome.
Inui T, Anzai M, Takezawa Y, Endo W, Kakisaka Y, Kikuchi A, Onuma A, et al.
J Hum Genet. 62(6):653-655. 2017.重症知的障害、先天性白内障、痙縮、筋緊張低下、進行性小脳萎縮を示したCODAS症候群の12歳男児においてLONP1の複合へテロ接合型変異を見いだした。
5What is the third serological marker associated with immune-mediated necrotizing myopathy?
Tanaka T, Suzuki S, Nishino I, Hamaguchi Y, Fujimoto T.
Scand J Rheumatol. 9:1-2. 2017.抗SRP抗体および抗HMGCR抗体が陰性で、抗ミトコンドリアM2抗体および抗RuvBL1/2抗体が陽性の免疫介在性壊死性ミオパチーの80歳女性例を報告した。抗ミトコンドリアM2抗体または抗RuvBL1/2抗体は、免疫介在性壊死性ミオパチーと関連する第3の自己抗体の可能性がある。
6TBCD may be a causal gene in progressive neurodegenerative encephalopathy with atypical infantile spinal muscular atrophy.
Ikeda T, Nakahara A, Nagano R, Utoyama M, Obara M, Moritake H, Uechi T, et al.
J Hum Genet. 62(4):473-480. 2017.脊髄性筋萎縮症 (SMA) はSMN遺伝子変異により引き起こされる常染色体劣性遺伝性疾患である。通常のSMAでは認めない臨床所見を伴うvariant formのSMAは非典型的SMAに分類されるが、原因遺伝子はわかっていない。今回、我々は、進行性の大脳萎縮を伴う非典型的SMAの兄弟例において、非罹患家族も含めて全エクソームシーケンス解析を行い、17番染色体q25.3に存在する2つのホモ接合性バリアント、tubulin-folding cofactor D (TBCD)遺伝子のR942Q、bromo-adjacent homology domain and coiled-coil cantaining 1 (BAHCC1)遺伝子のH250Q、を原因遺伝子候補として見出した。コンピューターを用いた解析では、TBCD遺伝子のバリアントがより病的な変異である可能性が高いと考えられた。TBCDは、運動ニューロンや中枢神経系のtubulin integrityに重要な役割を果たしていると予想されるが、進行性の大脳萎縮を伴う非典型的SMAの新規原因遺伝子の可能性がある。
7Cardiopulmonary dysfunction in patients with limb-girdle muscular dystrophy 2A.
Mori-Yoshimura M, Segawa K, Minami N, Oya Y, Komaki H, Nonaka I, Nishino I, et al.
Muscle Nerve. 55(4):465-469. 2017.LGMD2A(カルパイノパチー)患者の心機能、呼吸機能について後方指摘に調査した。43人のLGMD2A患者のうち、9人で努力性肺活量(FVC)が80%以下であり、3人が非侵襲的用圧呼吸器を使用していた。その一方で、心臓の合併症は1人でQRS波異常が、1人でエコー上軽度の左心機能低下が認められた。LGMD2Aは重度の呼吸障害をきたすが、心機能障害は稀であるといえる。
8Targeted massively parallel sequencing and histological assessment of skeletal muscles for the molecular diagnosis of inherited muscle disorders.
Nishikawa A, Mitsuhashi S, Miyata N, Nishino I.
J Med Genet. 54(2):104-110. 2017.2014-2015年に筋病理診断目的で国立精神・神経医療研究センターに筋検体、血液検体が送付され、遺伝性筋疾患が疑われたものの原因遺伝子が未確定の孤発例188例を、筋病理所見に基づき筋ジストロフィー(MD,65例)、先天性ミオパチー/先天性筋無力症候群(CMP/CMS, 65例)、代謝性ミオパチー(MM, 10例)、筋原線維性ミオパチー/縁取り空胞を伴うミオパチー(MFM, 48例)の4グループに分類した。各疾患群に関連した遺伝子のエクソン、エクソン・イントロン境界をカバーする4つのターゲット遺伝子パネルを作製し、それらを用いてIonPGM次世代シークエンサーで遺伝子解析を行った。また、MDが疑われた患者では、主要なMDの原因蛋白について免疫組織化学を行った。更に、スプライス部位の変異については、筋由来のcDNAを用いてスプライシング異常の評価を行った。各パネルで解析を行ったところ、MD 30例(46.2%)、CMP 17例(26.2%)、MM 3例(30%)、MFM 12例(25%)で候補遺伝子変異を見出した。全118患者での診断率は33.0%であった。機能喪失型の機序が想定される遺伝子に変異を認めた筋ジストロフィー患者の免疫組織化学では、蛋白の欠失や局在異常が確認された。また、イントロン領域に変異を認めた患者では、cDNA解析にて異常なスプライシングが起こっていることを確認した。我々の筋病理、mRNA、蛋白解析を併用した遺伝子診断法は、筋疾患患者における病的バリアントのスクリーニングに有用かつ効率が良い方法と考えられた。今回の研究の結果は、包括的な疾患関連の遺伝子変異データベースを発展させること、臨床、病理、分子学的実験など、多面的な評価が重要であることを示している。
9Cerebrospinal fluid neural cell adhesion molecule levels and their correlation with clinical variables in patients with schizophrenia, bipolar disorder, and major depressive disorder.
Hidese S, Hattori K, Sasayama D, Miyakawa T, Matsumura R, Yokota Y, Ishida I, et al.
Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 76:12-18. 2017.統合失調症患者85名、双極性障害患者57名、大うつ病性障害患者83名、および健常対照者111名を対象にELISA法で脳脊髄液中NCAMを定量した。NCAM量は精神疾患患者全体で健常対照者と比べ有意に低下し、特に双極性障害患者で有意に低下していた。また、NCAM量は双極性障害群で抑うつ症状と有意な負の相関を示し、統合失調症群では陰性症状と有意に負に、言語流暢性と有意に正に相関していた。本研究により重篤な精神疾患への中枢神経系NCAMの関与が示唆された。
10Missing genetic variations in GNE myopathy: rearrangement hotspots encompassing 5’UTR and founder allele.
Zhu W, Mitsuhashi S, Yonekawa T, Noguchi S, Huei JCY, Nalini A, Preethish-Kumar V, et al.
J Hum Genet. 62(2):159-166. 2017.DMRV患者さんの多くは、GNE遺伝子の、両方のアリルに遺伝子変異を持つことが知られていますが、通常のシークエンス法では一つしか変異が見つからないことがあります。これらの患者さんで、次世代シークエンサーを用いた詳細な解析をすることにより、もう一方のアリルに、GNE遺伝子内の大きな欠失が高率に見つかることを見いだしました。さらに興味深いことに、欠失断端の配列解析により、これらの欠失が、レトロトランスポゾン由来のAlu配列によって起きている可能性を指摘しました。Alu配列は全ゲノムの10%程度を占めるといわれておりますが、他の病気でも、ゲノム内の大きな欠失の原因となることが、報告されてきております。
11Pediatric necrotizing myopathy associated with anti-3-hydroxy-3-methylglutaryl-coenzyme A reductase antibodies.
Liang WC, Uruha A, Suzuki S, Murakami N, Takeshita E, Chen WZ, Jong YJ, et al.
Rheumatology (Oxford). 56(2): 287-293. Feb. 2017.抗3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリルCoA還元酵素抗体(抗HMGCR抗体)は自己免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)の病因自己抗体の一つである。当初、高脂血症治療薬であるスタチン製剤との関連が注目され、抗HMGCR抗体陽性IMNMの報告は成人症例にほぼ限られ、小児例の実態は明らかでなかった。本研究は小児抗HMGCR抗体陽性IMNMの臨床・病理学的特徴を明らかにすることを目的に行われた。2010 - 2015年に筋炎統合的診断研究プロジェクトに登録された炎症性筋疾患疑いの小児患者62例において抗HMGCR抗体を解析し、同抗体は9例(15%)で検出された。これら9例のうち5例は慢性的な臨床経過をたどり、筋ジストロフィーと暫定診断されていた。筋病理学的にも半数の症例で筋ジストロフィー様の中等度ないし高度の筋内鞘線維化と脂肪浸潤を伴う壊死・再生像が観察された。治療に関しては、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制剤、免疫グロブリンなどが使用され、特に発症早期に治療を開始した症例でより良好な反応が見られる傾向があった。 本研究で抗HMGCR抗体陽性IMNMの小児例は少なからず存在することが示された。また臨床病理学的に筋ジストロフィーと類似する点がある一方、IMNMには免疫修飾療法の有効性が見込まれるため、筋炎が鑑別診断として第一に考えられる患者だけでなく、小児期発症の病因未確定の筋ジストロフィー疑い患者においても、抗HMGCR抗体を含む自己抗体測定を積極的に行うことが望ましいと考えられた。
12Granuloma formation in a patient with GNE myopathy: A case report.
Nakamura K, Hamaguchi T, Sakai K, Noto D, Ono K, Hayashi YK, Nishino I, et al.
Neuromuscul Disord. 27(2):183-184. 2017.炎症細胞非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を呈するGNEミオパチー患者を経験した。患者はGNE遺伝子にホモ接合型変異(c.1505-4G>A)を有し、60歳頃より進行性に四肢の筋力低下を自覚した。65歳時には前脛骨筋に著明な筋力低下と筋萎縮、遠位筋優位に中等度の筋力低下を認めた。筋生検では縁取り空砲を伴う筋線維の萎縮、炎症細胞浸潤と共に非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を認めた。GNEミオパチーにおける肉芽腫形成の報告はこれまでになく、本症例が初めての報告例である。筋細胞内での異常な蛋白質の蓄積やオートファジーの過剰な活性化により肉芽腫が形成された可能性がある。
13A patient with slowly progressive adult-onset nemaline myopathy and novel compound heterozygous mutations in the nebulin gene.
Tsunoda K, Yamashita T, Motokura E, Takahashi Y, Sato K, Takemoto M, Hishikawa N, et al.
J Neurol Sci. 373(2017):254-257. 2017.ネマリンミオパチーは小児期に徐々に発症する希少な先天性ミオパチーで、TPM3、NEB、ACTA1、TPM2、TNNT1、CFL2などの遺伝子変異により引き起こさせる。これらの遺伝子は細フィラメントの構成タンパク質であるが、ネブリン遺伝子変異がネマリンミオパチーの原因として約半数を占める。ネマリンミオパチーは1963年に初めて報告され、筋線維に見られるネマリン小体という糸状の構造物が特徴である。臨床的特徴としては、筋力低下、呼吸不全、先天性形質異常(細長い顔貌、テント状上口唇、高口蓋、下顎後退など)を呈し、生後早期に死亡する例もある。小児期発症型と同様に成人発症型ネマリンミオパチーは発症から2年以内に呼吸器不全となり、歩行困難になるのが通例である。ここでは、ネブリン遺伝子の新規遺伝子変異を持つ成人発症型ネマリンミオパチー患者を報告するが、このケースは症状の進行が非常に穏やかであり、発症から19年経過後も階段を上ることが可能である。
14Respiratory chain complex disorganization impairs mitochondrial and cellular integrity: Phenotypic variation in cytochrome c oxidase deficiency.
Hatakeyama H, Goto Y.
Am J Pathol. 187(1):110-121. 2017.チトクロームc酸化酵素欠損症患者の培養細胞を用いて、酵素活性、蛋白量、アッセンブリー状態などの解析を行うことで病態解析が可能であることを示した。
15Mitochondrial respiratory dysfunctjon disturbs neuronal and cardiac lineage commitment of human iPSCs.
Yokota M, Hatakeyama H, Ono Y, Kanazawa M, Goto Y.
Cell Death Dis. 8(1):e2551. 2017.ミトコンドリアDNAの代表的な病的変異であるm.3243A>G変異を持つ患者由来の線維芽細胞からiPS細胞を作製し、神経細胞と心筋細胞への分化誘導を行い、変異率と誘導効率とを検討した。変異率の高い(90%以上の)iPS細胞は分化が阻害されるとともに、細胞死が誘導されることを示した。
16Sarcoplasmic MxA expression: A valuable marker of dermatomyositis.
Uruha A, Nishikawa A, Tsuburaya RS, Hamanaka K, Kuwana M, Watanabe Y, Suzuki S, et al.
Neurology. 88(5):493-500. 2017.厚生労働省指定難病の一つである皮膚筋炎の診断において、筋細胞上に発現するMxA(ミクソウイルス抵抗蛋白質A)が、従来のものと比較して最も優れた診断バイオマーカーになることを明らかにしました。 皮膚筋炎は筋肉と皮膚に炎症をきたし、筋力低下や皮膚の発疹を起こす疾患です。間質性肺炎やがんといった生命に関わる合併症を伴うこともあることから、より早期からの正確な診断が求められます。研究グループは、皮膚筋炎患者の筋細胞上に発現するMxAを検出することで、従来の診断方法に比べて高感度で診断できることを発見しました。この研究成果は、今後の皮膚筋炎の診断精度の向上に大きく貢献するものと期待されます。 本論文は当該号の表紙を飾りました。
17Adult-onset Mitochondrial Myopathy, Encephalopathy, Lactic Acidosis, and Stroke (MELAS)-like Encephalopathy Diagnosed Based on the Complete Sequencing of Mitochondrial DNA Extracted from Biopsied Muscle without any Myopathic Changes.
Mukai M, Nagata E, Mizuma A, Yamano M, Sugaya K, Nishino I, Goto YI, et al.
Intern Med. 56(1):95-99. 2017.ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様発作症候群は、臨床症状が一定していないことが特徴である。33歳男性で家族歴がなく、脳卒中発作を繰り返していた。この患者の生検筋から抽出したDNAに対して、ミトコンドリアゲノム解析を行ったところComplexIのサブユニットをコーディングするMTND3上のm.10158T>C変異を検出した。 高次機能障害の進行を妨ぐには、迅速な診断と適切な治療介入が必要である。
18Biallelic Mutations in MYPN, Encoding Myopalladin, Are Associated with Childhood-Onset, Slowly Progressive Nemaline Myopathy.
Miyatake S, Mitsuhashi S, Hayashi YK, Purevjav E, Nishikawa A, Koshimizu E, Suzuki M, et al.
Am J Hum Genet. 100(1):169-178. 2017.全エキソーム解析でネマリンミオパチー(NM)の原因遺伝子MYPNを同定した。NMは近位筋優位の筋力低下、筋緊張低下、呼吸筋低下を呈する先天性ミオパチーで、心筋合併症は稀である。原因遺伝子は10種類報告されているが、約25-30%の症例では遺伝学的原因は不明である。重症度は様々で、重症な症例の多い核内棒状封入体をもつサブタイプでは原因遺伝子としてACTA1遺伝子のみが報告されている。 病理学的にはNMと診断されているものの遺伝学的原因が不明な症例に全エキソーム解析を行ったところ、4家系4症例にMYPM遺伝子劣性変異を認めた。いずれの症例も小児期から成人期の発症で、比較的軽症かつ緩徐進行性の経過であり、40歳代で歩行障害を認めた。内2症例に呼吸筋障害、心筋障害、病理学的に核内棒状封入体を認めた。MYPM遺伝子が作るタンパク質は筋サルコメアの構成成分でありZ線に位置するが、患者群ではこのタンパク質がほとんど消失していた。MYPM遺伝子のナンセンス変異をもつノックインマウスでは、Z線の構造異常やネマリン小体様の凝集物が電子顕微鏡下で確認され、NMの病態が再現できた。 本研究により、比較的軽症のNM症例、特に心筋障害を合併もしくは核内ロッドを認める症例では、MYPM遺伝子のスクリーニングの検討が必要と示唆された。
19Genome-wide quantitative trait loci mapping of the human cerebrospinal fluid proteome.
Sasayama D, Hattori K, Ogawa S, Yokota Y, Matsumura R, Teraishi T, Hori H, et al.
Hum Mol Genet. 26(1):44-51. 2017.133名を対象とし、514,227の各一塩基多型(SNP)の遺伝子型と1,126種類の各タンパク質の髄液中濃度との関連をスピアマン相関係数を用いて調べた。cis SNP-タンパク質の組合せは421組、transでは25組がFDR 1%の有意水準で相関していた。cisの組合せのみでの解析ではさらに580組が有意となった。本研究により、遺伝子多型が中枢神経におけるタンパク質の発現に重要な役割を担うことが示唆された。

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2016年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1Plasma Metabolites Predict Severity of Depression and Suicidal Ideation in Psychiatric Patients-A Multicenter Pilot Analysis.
Setoyama D, Kato TA, Hashimoto R, Kunugi H, Hattori K, Hayakawa K, Sato-Kasai M, et al.
PLoS One. 11(12):e0165267. 2016.九州大学、大阪大学、NCNPバイオバンクの共同研究グループは、抑うつ症状を呈する患者(うつ病や躁うつ病患者)から採血し、微量の血液成分から数多くの代謝物を同時計測できるメタボローム解析を行い、うつ病の重症度に寄与する血中代謝物(3-ヒドロキシ酪酸、ベタインなど)を発見した。また、自殺念慮の有無や強さを予測するアルゴリズム開発にも成功した。
2Association of body mass index-related single nucleotide polymorphisms with psychiatric disease and memory performance in a Japanese population.
Ninomiya-Baba M, Matsuo J, Sasayama D, Hori H, Teraishi T, Ota M, Hattori K, et al.
Acta Neuropsychiatr. 7:1-10. 2016肥満関連遺伝子と精神疾患との関連を探索し、KLF9などの遺伝子多型と精神疾患・認知機能との関連を見出した。
3Low dose resveratrol ameloorates mitochondrial respiratory dysfunction and enhances cellular reprogramming.
Mizuguchi Y, Hatakeyama H, Sueoka K, Tanaka M, Goto Y.
Mitochondrion. 34:43-48. 2017.低容量のレスベラトロールはホモプラスミックなミトコンドリアDNA変異を持つ患者由来線維芽細胞の呼吸差酵素活性の低下を改善し、iPS細胞へのリプログラミング効率を上昇させた。
4Early onset of cardiomyopathy and intellectual diability in a girl with Danon disease associated with a de novo novel mutation of the LAMP2 gene.
Sugie K, Yoshizawa H, Onoue K, Nakanishi Y, Eura N, Ogawa M, Nakano T, et al.
Neuropathology. 36(6): 561-565. 2016.Danon病はX連鎖優性遺伝形式の疾患であり、男性は肥大型心筋症、ミオパチー、知的障害が3主徴で小児期から発症するのに対し、女性では肥大型心筋症や伝導障害が主症状となり、成人発症であることが多い。今回、我々は12歳で発症し、心筋症と伝導障害に加え、知的障害も合併したLAMP2遺伝子にナンセンス変異を持つDanon病女児例を経験した。Danon病の女児で知的障害を有する症例の報告は本症例が初めてであり、Danon病女性の臨床症状には幅があることが考えられた。
5Divergent clinical outcomes of alpha-glucosidase enzyme replacement therapy in two siblings with infantile-onset Pompe disease treated in the symptomatic or pre-symptomatic state.
Matsuoka T, Miwa Y, Tajika M, Sawada M, Fujimaki K, Soga T, Tomita H, et al.
Mol Genet Metab Rep. 9(2016): 98-105. 20162例の乳幼児期発症のポンペ病(IOPD)における酵素補充療法(ERT)の効果について報告した。IOPD患者は未治療の場合生後1年以内に死亡する。一方、本報告において生後4か月からERTを施行された患者は6歳時においてもベッドから起き上がる事は出来ないが生存していた。生後10日目からERTを施行された2例目は3歳時より筋力低下を示したがそれ以前は無症状であった。 以上の2例の結果は、生後早い時期からのERTは数年間IOPDの症状を予防、軽減するのに有効であることを示している。しかし、さらに長期間ERTの効果を継続させるには、酵素の筋への取り込みの増強が必要と考えられる。
6Calcium Dyshomeostasis in Tubular Aggregate Myopathy.
Lee JM, Noguchi S.
Int J Mol Sci. 17(11):E1952. 2016.Tubular Aggregate Myopathyの臨床病理学的特徴について概説するとともに、その原因となる遺伝子変異、さらに変異から引き起こされる分子構造/機能変化について解説し、疾患の分子病態メカニズムを考察した。
7Effects of ankyrin 3 gene risk variants on brain structures in patients with bipolar disorder and healthy subjects.
Ota M, Hori H, Sato N, Yoshida F, Hattori K, Teraishi T, Kunugi H.
Psychiatry Clin Neurosci. 70(11):498-506. 2016.双極性障害の発症に関連するといわれているankyrin 3遺伝子多型とMRI形態画像との関連について検討し、疾患群における加齢性変化との関連を明らかにした
8Multicenter questionnaire survey for sporadic inclusion body myositis in Japan.
Suzuki N, Mori-Yoshimura M, Yamashita S, Nakano S, Murata KY, Inamori Y, Matsui N, et al.
Orphanet J Rare Dis. 11(1):146. 2016.孤発性封入体筋炎(sIBM)は高齢患者の筋疾患で、最も一般的な疾患である。 sIBMは、原因不明で治療抵抗性の難治性疾患である。病因はまだはっきりしていないが、遺伝素因、年齢、ライフスタイル、環境要因が関与している可能性がある。日本のsIBM患者の横断的調査を行い、その概観を明らかにする。 多施設で診断された、146名の日本人患者のデータを集めた。さらに自然歴を詳細に調べるため、67名の患者または介護者にアンケート調査を行った。発症年齢は63.4±9.2歳で、発症から診断までの期間は、55.52±49.72ヶ月であった。これは疾患が治療に難渋し、診断するまでに時間がかかるためであると示唆される。73%はこの疾患に対する精神面の不安を訴えた。最も多い初期の介護者は配偶者で、57%の患者が金銭面の不安を訴えていた。これは高年齢の疾患であることが原因として考えられ、西洋諸国と同様のプロフィールを呈していると考えられた。
9HLA-DRB1 alleles in Immune-mediated necrotizing myopathy.
Ohnuki Y, Suzuki S, Shiina T, Uruha A, Watanabe Y, Suzuki S, Izumi S, et al.
Neurology. 87(18):1954-1955. 2016.免疫介在性壊死性ミオパチー(IMNM)の危険因子としては、スタチン製剤、癌、結合組織病(CTD)があげられる。また、マーカーとしては、SRP、HMGCRに対する自己抗体があるが、病理学的にIMNMと診断された患者のすべてで検出できるわけではなく、IMNMの自己免疫機序はまだ解明されていない。今回、IMNM患者におけるヒト白血球抗原(HLA)-DRB1対立遺伝子型について調査した。 DRB1*08:03は正常群と比較し、IMNM群で優位に多く、DRB1*11:01はIMNMの危険因子であった。さらにDRB1*08:03は抗SRP抗体関連IMNM患者に多く見られ、DRB*11:01は抗HMGCR抗体関連IMNMに優位に多く検出された。IMNM患者の合計数が少なく、今後症例の蓄積は必要であるが、IMNMは特定のHLADRB1対立遺伝子と関連していると考えられる。
10DNM1L-related encephalopathy in infancy with Leigh syndrome-like phenotype and suppression-burst.
Zaha K, Matsumoto H, Itoh M, Saitsu H, Kato K, Kato M, Ogata S, et al.
Clin Genet. 90(5):472-474. 2016.Dynamin1 like (DNML1)はGTPaseの一種で、ミトコンドリアやペルオキシソームの分裂を調整しており、ドミナントネガティブの変異は、哺乳類の細胞でミトコンドリアの分裂を妨げることが知られている。また人の表現型としては非常に重症な乳児の脳症が報告されている。今回臨床症状で筋緊張の低下とサプレッションバーストを伴うスパズムを認め、生化学検査でミトコンドリアの機能不全、病理学的にはLeigh脳症を呈した症例を経験し、全エクソーム解析を施行したところde novoの新規のDNML1変異が発見された。この症例を過去に報告されたDNM1L関連脳症症例との比較、考察を行い、報告する。
11Reactive oxygen species stimulate mitochondrial allele segregation toward homoplasmy in human cells.
Ling P, Rong N, Hatakeyama H, Goto Y, Shibata T, Yoshida M.
Mol Biol Cell. 27(5):1684-1693. 2016ヘテロプラスミー状態にあるミトコンドリア病患者由来のヒト細胞において、細胞内で自然に生じた適度な濃度のROSがコンカテマーを形成するローリングサークル型複製を誘発し、mtDNAのホモプラスミー化を導くことを示した。
12Biallelic TBCD Mutations Cause Early-Onset Neurodegenerative Encephalopathy.
Miyake N, Fukai R, Ohba C, Chihara T, Miura M, Shimizu H, Kakita A, et al.
Am J Hum Genet. 99(4):950-961. 2016.小児期早期(1歳未満)に発症し,進行性のびまん性脳萎縮,退行,小頭症,発達遅滞, 筋力低下,筋萎縮,呼吸不全という特徴的な臨床症状を呈する4家系8症例に全エキソーム解析を用いて遺伝子変異探索を施行した. その結果全8症例にTBCDの劣性変異を認め,ミスセンス変異5つ,ナンセンス変異1つ,スプライス部位の異常によるフレームシフト変異1つの計7変異を同定した.TBCDはtubulin-specific chaperonesと呼ばれる5つのシャペロン分子の1つで,微小管集合体において重要な役割を果たす.またARL2,TBCE,β-tubulinと結合することが知られているが,細胞実験においてこれらの結合能は低下していた.キイロショウジョウバエの嗅覚投射ニューロンを用いた実験では,TBCD変異により機能を失い,この変異は機能喪失型変異と考えられた.症例により重症度が大きく異なるが,TBCD蛋白の機能がどの程度機能が残されているかに起因すると考えられた.剖検例の脳組織学的検索においては小脳のプルキンエ細胞の変性所見が観察された.これはミトコンドリア異常症で観察される所見であり,TBCD変異により微小管に依存する細胞内ミトコンドリア輸送が障害されることがこの神経変性脳症の病態である可能性が示唆された.
13Clinical features and prognosis in anti-SRP and anti-HMGCR necrotizing myopathy.
Watanabe Y, Uruha A, Suzuki S, Nakahara J, Hamanaka K, Takayama K, Suzuki N, et al.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 87(10):1038-1044. 2016.自己免疫介在性壊死性ミオパチー(iNM)に関連する自己抗体として抗SRP抗体と抗HMGCR 抗体が知られているが、両者がもたらす臨床病理学的な差異は明らかではなく、本研究はそれを明らかにすることを目的とした。2010 - 2014年に筋炎統合的診断研究プロジェクトに登録された特発性炎症性筋疾患症例 460例のうち、臨床病理学的にiNMと診断された例は177例であった。うち抗 SRP抗体陽性例は69例(39%)、抗HMGCR 抗体陽性例は46例(26%)であった。これらの症例を対象に臨床病理像を比較した。抗SRP 抗体陽性例では重度の筋力低下、筋萎縮、頚部筋力低下、嚥下障害、呼吸障害、間質性肺病変の頻度が有意に高く、一方、抗HMGCR抗体陽性例ではスタチン製剤の使用、細胞膜上へのMAC (C5b-9)沈着が高頻度であった。 本研究は抗SRP抗体と抗HMGCR抗体の臨床病理像を過去最大規模の症例数で解析し、両者の相違点を世界に先駆けて報告した。 尚、この内容は同号のEditorialで注目論文として取り上げられた。
14Novel TK2 mutations as a cause of delayed muscle maturation in mtDNA depletion syndrome.
Termglinchan T, Hisamatsu S, Ohmori J, Suzumura H, Sumitomo N, Imataka G, Arisaka O, et al.
Neurol Genet. 2(5): e95. eCollection. Oct. 2016 乳児期早期に重度のミオパチーを発症するミトコンドリア枯渇症候群は、TK2遺伝子変異の劣性遺伝によって生じる。近年の報告では、ミトコンドリア脳筋症を含む、より幅広いスペクトラムが示唆されている。  乳児期発症のミトコンドリア脳筋症で、筋が著明に未発達な症例を経験したので報告する。  症例は、日本人の女児で、出生後すぐに、けいれんと呼吸不全を認め、抗てんかん薬を投与し、人工呼吸器管理を要した。低緊張と筋力低下を認め、生後2日のCK値は7709IU/Lだったが、血中乳酸値は正常であった。筋CTでは、全身の筋萎縮と脂肪置換を認めた。また、頭部CTでは、生後1か月の短期間に、著明な脳室拡大を伴った脳の急速な萎縮を認めた。生後10か月、うっ血性心不全にて、死亡した。  生後4か月時に施行した筋生検では、ほぼ全ての筋線維が直径4〜6μmと著明に小さく、壊死・再生線維はなく、著明な筋束周囲の線維化を認めた。チトクロームCオキシダーゼ活性はびまん性に低下していた。電顕所見では、脂肪滴を含むミトコンドリアを多量に認め、高密度なヘテロクロマチンを持つ大きな衛星細胞を14%に認めた。  全エキソーム解析では、TK2遺伝子のイントロン1のc.125G>Cと、c.574A>G, p.P192Gの2つの新規の遺伝子変異を認めた。  これは、TK2遺伝子に関連した、ミトコンドリア脳筋症で筋の発達が著明に未発達である稀な症例であり、この疾患の幅広いスペクトラムが示唆された。TK2遺伝子変異を持つMDSは、急速に進行する脳萎縮と骨格筋の成熟遅延が特徴であることとが示された。
15Possible association of Bifidobacterium and Lactobacillus in the gut microbiota of patients with major depressive disorder.
Aizawa E, Tsuji H, Asahara T, Takahashi T, Teraishi T, Yoshida S, Ota M, et al.
J Affect Disord. 202:254-7. 2016.43人の大うつ病性障害患者と57名の健常者の腸内細菌について、善玉菌であるビフィズス菌と乳酸桿菌の菌数を比較したところ、うつ病患者群は健常者群と比較して、ビフィズス菌の菌数が有意に低いこと、さらにビフィズス菌・乳酸桿菌ともに一定の菌数以下である人が有意に多かった。この結果から、善玉菌が少ないとうつ病リスクが高まることが示唆された。
16Perifascicular necrosis in anti-synthetase syndrome beyond anti-Jo-1.
Uruha A, Suzuki S, Suzuki N, Nishino I.
Brain. 139(Pt 9):e50. 2016. Mescam-Manciniらは「perifascicular necrosis」という筋病理所見が抗Jo-1抗体を伴う筋炎に特徴的に観られることをBrain誌上に報告した。しかしこの報告では抗Jo-1抗体以外の抗ARS抗体でもperifascic ular necrosisが観られるかどうかは検討されていなかった。そこで我々は、抗Jo-1抗体以外の抗ARS抗体陽性症例を含めたコホートで解析を行い、perifascicular necrosisが抗Jo-1抗体のみならず他の抗ARS抗体にも共通して観られる筋病理所見であることを追加報告した。近年、抗ARS抗体を伴う筋炎は、多発筋炎や皮膚筋炎とは異なる病態を有することが示唆されているが、我々の報告はその考えを支持するものである。
17Japanese multiple epidermal growth factor 10 (MEGF10) myopathy with novel mutations: A phenotype-genotype correlation.
Takayama K, Mitsuhashi S, Shin JY, Tanaka R, Fujii T, Tsuburaya R, Mukaida S, et al.
Neuromuscul Disord. 26(9):604-609. 2016.Multiple epidermal growth factor-like domeins(MEGF10)遺伝子の変異は、重症な腱反射消失、呼吸障害、嚥下障害を伴う早期発症型ミオパチー(EMARDD)と、比較的軽症なミニコアミオパチーの二つの表現型が報告されている。我々は、日本人患者でMEGF10遺伝子の変異によるEMARDDとミニコアミオパチーをそれぞれ発見し、遺伝子型と表現型の相関について考察を行った。これは、東アジアで初めてのMEGF10ミオパチーの報告である。
18An elderly-onset limb girdle muscular dystrophy type 1B (LGMD1B) with pseudo-hypertrophy of paraspinal muscles.
Furuta M, Sumi-Akamaru H, Takahashi MP, Hayashi YK, Nishino I, Mochizuki H.
Neuromuscul Disord. 26(9):593-597. 2016.A型ラミンをコードするLMNA遺伝子の変異は、ラミノパチーと呼ばれる多様な障害を起こす。今回、LMNA遺伝子にヘテロ接合のp.Arg377His変異を持つ、65歳から骨格筋症状が出現した肢帯型筋ジストロフィー1B型(LGMD1B)患者を報告する。脊柱起立筋から筋力低下が始まり、72歳時には著明な脊柱起立筋の偽性肥大を認めた。44歳から失神を認めたが、60歳まで心筋の伝導路異常は認めなかった。p.Arg377His変異は、家族性のLMNA遺伝子関連ミオパチーにおいて脊椎周囲の筋の仮性肥大を起こすことがこれまでに報告されているが、それらのほとんどは60歳までに筋力低下を示している。脊椎周囲の筋の仮性肥大がある点、筋力低下の発症が高齢であるという点で本症例は他にみられない。
19Heteroplasmic mitochondrial DNA mutations and mitochondrial diseases: Toward iPSC-based disease modeling, drug discovery, and regenerative therapeutic.
Hatakeyama H,Goto Y.
Stem Cells. 34(4): 801-808. 2016.ミトコンドリア病のiPS細胞の特異性と疾患研究への応用について解説した
20Cell-Surface Protein Profiling Identifies Distinctive Markers of Progenitor Cells in Human Skeletal Muscle.
Uezumi A, Nakatani M, Ikemoto-Uezumi M, Yamamoto N, Morita M, Yamaguchi A, Yamada H, et al.
Stem Cell Reports. 7(2):263-278. 2016.骨格筋には幹細胞である筋衛星細胞細と、筋への脂肪浸潤やその線維化に寄与する間葉系前駆細胞の全く異なる幹/前駆細胞が存在するが、その詳細は不明であった。本研究では、ヒト骨格筋に存在するこれらの幹/前駆細胞の細胞表面タンパク質を包括的に解析し、筋衛星細胞についてはCD82及びCD318、間葉系前駆細胞についてはCD201を新規マーカーして同定した。これらのマーカーを用い、筋原性の前駆体と間葉系前駆体を区別し、単離することが可能になった。機能解析においては、CD82が過剰な筋分化を抑制することにより筋原性の前駆体の増殖と保存を調節していること、またCD201シグナルにより間葉系細胞の脂肪分化を促進することが明らかとなった。よって、本研究で同定されたこれらの細胞表面タンパク質は、骨格筋における幹/前駆細胞の有効なマーカーであるだけでなく、ヒト骨格筋の恒常性維持機構や疾患のさらなる理解のために重要な分子であろう。
21Nuclear inclusions mimicking poly (A)-binding protein nuclear 1 inclusions in a case of inclusion body myopathy associated with Paget disease of bone and frontotemporal dementia with a novel mutation in the valosin-containing protein gene.
Matsubara S, Shimizu T, Komori T, Mori-Yoshimura M, Minami N, Hayashi YK.
Neuromuscul Disord. 26(7):436-440. 2016.骨パジェット病および前頭側頭型痴呆を伴う封入体ミオパチー(IBMPFD)であるにも関わらず、眼咽頭型筋ジストロフィー(OPMD)に特有な核内封入体が存在する症例を報告した。常染色体優性遺伝を示唆する家族歴があり、緩徐進行性で非対称な四肢遠位筋力低下を示し、眼瞼下垂や嚥下障害はない。筋病理では、神経原性萎縮とミオパチーの混合所見を示し、縁取り空胞が見られた。核内封入体はOPMD特有なものに類似する微細構造を持ち、免疫染色でPABPN1タンパク質陽性であった。臨床的特徴と遺伝子解析からOPMDが否定される一方、VCPタンパク質に c.376A> T(p.Ile126Phe)変異が見つかった。
22Chronic Myopathy Associated With Anti-Signal Recognition Particle Antibodies Can Be Misdiagnosed As Facioscapulohumeral Muscular Dystrophy.
Ikeda K, Mori-Yoshimura M, Yamamoto T, Sonoo M, Suzuki S, Kondo Y, Nakamura H, et al.
J Clin Neuromuscul Dis. 17(4):197-206. 2016.抗SRP抗体を伴う自己免疫介在性壊死性ミオパチー(抗SRPミオパチー)患者で、長期経過と筋病理における炎症が見られないことから、当初は筋ジストロフィーと診断されていた6例を報告した。内5例は、翼状肩甲を呈したことから顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー(FSHD)と診断されていた。しかし、家族歴がない事、筋力低下に左右差が目立たないこと、重度の嚥下障害等の所見から、抗SRPミオパチーが疑われ、抗体測定により抗SRPミオパチーの診断が確定した。これらの症例は、非典型的FSHD症例においては抗SRP抗体測定を考慮する必要性があることを示している。
23Genetic diagnosis of Duchenne/ Becker muscular dystrophy using next-generation sequencing: validation analysis of DMD mutations.
Okubo M, Minami N, Goto K, Goto YI, Noguchi S, Mitsuhashi S, Nishino I.
J Hum Genet. 61(6):483-489. 2016.Duchenne/Becker型筋ジストロフィー(DMD/BMD)の原因遺伝子であるジストロフィン遺伝子異常の診断に次世代シークエンス法(IonPGMによるシークエンス)を用いた。欠失は全例診断可能であり、一方重複は7割が評価可能であった。微小変異は連続した塩基の挿入変異の検出が困難であった。現行のMLPA法よりも診断率が高く、治療が期待されるナンセンス変異の検出も一度に可能であり、今後次世代シークエンス法がDMD/BMD診断の第一選択となることが期待される。
24Mutations in DNMT3B Modify Epigenetic Repression of the D4Z4 Repeat and the Penetrance of Facioscapulohumeral Dystrophy.
Van den Boogaard ML, Lemmers RJ, Balog J, Wohlgemuth M, Auranen M, Mitsuhashi S, van der Vliet PJ, et al.
Am J Hum Genet. 98(5):1020-1029. 2016.FSHD(顔面肩甲上腕型ジストロフィー)発症には、D4Z4塩基配列のリピート数と、D4Z4内にコードされているDUX4という遺伝子発現抑制因子が深く関わっている。リピート配列が1〜10個に減少すること(FSHD1)、または、SMCHD1遺伝子変異によって体細胞上のDUX4に結合し遺伝子発現抑制効果が減弱すること(FSHD2)が原因と考えられている。 本論文では、DNMT3B(DNAメチルトラスフェラーゼ3B)のヘテロ接合変異では、D4Z4リピート数を減少させ、DUX4の抑制効果の減弱に影響し、FSHDの浸透率を高めることに関与していることを示した。また、DUX4の転写は、エピジェネティックな要素によって修飾されていることが示唆された。
25Clinical, muscle pathological, and genetic features of Japanese facioscapulohumeral muscular dystrophy 2 (FSHD2) patients with SMCHD1 mutations.
Hamanaka K, Goto K, Arai M, Nagao K, Obuse C, Noguchi S, Hayashi YK, et al.
Neuromuscul Disord. 26(4-5):300-308. Apr-May. 2016本研究で、アジア人初の顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー2型(FSHD2)患者が同定された。FSHDは、D4Z4リピートと呼ばれる繰り返しDNA配列が短縮して発症するFSHD1と、SMCHD1と呼ばれる遺伝子の変異で発症するFSHD2に分類される。今まで、アジア人のFSHD2患者の報告はなかった。本研究では、SMCHD1遺伝子における変異を持つ日本人患者11家系13症例が同定された。結果、これらFSHD2患者は、FSHD1と臨床的、 筋病理学的に同様であった。また遺伝学的に、日本人FSHD2患者は、欧米のFSHD2患者と異なる種類のSMCHD1遺伝子変異を持っていた。また、これらFSHD2患者はD4Z4リピートが正常下限程度の長さであり、SMCHD1遺伝子変異のみならずD4Z4リピートがある程度短い事がFSHD2発症に必要である可能性が示唆された。
26Case of McLeod syndrome with a novel genetic mutation.
Narumi S, Natori T, Miyazawa H, Kato T, Yonezawa H, Nishino I, Nakamura M, et al.
Neurology and Clinical Neuroscience. 4(3):115-117. 2016.McLeod syndromeはXK遺伝子変異により引き起こされる神経有棘赤血球症である。XK遺伝子の変異は数多く報告されているが、希少疾患であるMcLeod syndromeの病態はいまだにわかっていない。我々はCK値上昇と下肢の筋委縮・筋力低下を伴う64歳男性のMcLeod syndrome 患者を報告する。この患者は明らかな有棘赤血球とKell抗原の低下が見られ、XKタンパク質が欠損していた。本患者の遺伝子解析を行い、XK遺伝子のエクソン3にc.del724_729TGTAGinsGGTCCTCTTTACC の新規変異を見出した。
27Muscle from a 20-week-old myotubular myopathy fetus is not myotubular.
Hamanaka K, Inami I, Wada T, Mitsuhashi S, Noguchi S, Hayashi YK, Nishino I.
Neuromuscul Disord. 26(3):234-235. 2016ミオチュブラーミオパチ―は筋形成に異常があると考えられてきた。しかし、本症例のミオチュブラーミオパチ―の胎児において筋形成は正常であった。それ故、ミオチュブラーミオパチ―は筋形成に異常があるという仮説は否定的である。
28Probable high prevalence of limb-girdle muscular dystrophy type 2D in Taiwan.
Liang WC, Chou PC, Hung CC, Su YN, Kan TM, Chen WZ, Hayashi YK, et al.
J Neurol Sci. 26(3): 234-235. 2016常染色体劣性遺伝である肢体型筋ジストロフィー(LGMD2D)の症例は民族的な背景により様々であり、アジアにおいては数例のみ報告がある。原因遺伝子としてSGCAが知られており、本研究においては5人の患者にSGCA新規ホモザイガス変異c.101G>T(p.Arg34Leu)を、また、両親にはヘテロザイガス変異を見出した。さらにハプロタイプ解析から、台湾の大先住民家系に属するこれら5人の患者とその両親は共通のハプロタイプであった。このことは、台湾、殊に大先住民族家系におけるSGCA c.101G>T変異の罹患率調査の重要性を示唆する結果となった。
29Respiratory and cardiac function in Japanese patients with dysferlinopathy.
Nishikawa A, Mori-Yoshimura M, Segawa K, Hayashi YK, Takahashi T, Saito Y, Nonaka I, et al.
Muscle Nerve. 53(3):394-401. 2016.日本人dysferlinopathy患者の心肺機能について、剖検2例を含めた48例で後方視的に検討を行った。呼吸機能検査では47例中19例で%FVCが低下しており、そのうち4例では非侵襲的陽圧換気療法を必要としていた。%FVCは罹病期間と有意な負の相関を示した。また、平均%FVCは、65歳以上の高齢者、歩行不能例、血清CK正常例で有意に低下した。心電図では、46例中19例でQRS幅が延長していたが、QRS幅と年齢、罹病期間、呼吸機能との有意な相関は認めなかった。心臓超音波では、23例中、左室機能低下を呈した例はなかった。剖検例では、軽度の心筋症と中等度の横隔膜障害を認めた。以上より、dysferlinopathy患者では、重篤な呼吸機能障害と潜在的な心筋障害を合併する可能性があり、心肺機能の定期的な評価が必要であると考えられる。
30Genetic diagnosis of Duchenne/ Becker muscular dystrophy using next-generation sequencing: validation analysis of DMD mutations.
Okubo M, Minami N, Goto K, Goto YI, Noguchi S, Mitsuhashi S, Nishino I.
J Hum Genet. 61(6):483-9. 2016.Duchenne/Becker型筋ジストロフィー(DMD/BMD)の原因遺伝子であるジストロフィン遺伝子異常の診断に次世代シークエンス法(IonPGMによるシークエンス)を用いた。欠失は全例診断可能であり、一方重複は7割が評価可能であった。微小変異は連続した塩基の挿入変異の検出が困難であった。現行のMLPA法よりも診断率が高く、治療が期待されるナンセンス変異の検出も一度に可能であり、今後次世代シークエンス法がDMD/BMD診断の第一選択となることが期待される。
31Heteroplasmic mitochondrial DNA mutations and mitochondrial diseases: Toward iPSC-based disease modeling, drug discovery, and regenerative therapeutic
Hatakeyama H, Goto Y.
Stem Cells. 34(4):801-8. 2016.ミトコンドリア病のiPS細胞の特異性と疾患研究への応用について解説した
32Pyruvate improved insulin secretion status in a mitochondrial diabetes mellitus patient.
Inoue T, Murakami N, Ayabe T, Oto Y, Nishino I, Goto YI, Koga Y, et al.
J Clin Endocrinol Metab. 101(5):1924-6. 2016.ミトコンドリア遺伝子異常による糖尿病患者に対して、ピルビン酸塩を経口投与(0.5/kg/day)し治療効果の評価を行った。患者は32歳 日本人男性で、20歳の時にミトコンドリア異常性糖尿病と診断された。治療効果は血液、髄液中の乳酸、ピルビン酸、Cペプチド、糖化ヘモグロビン、糖化アルブミン、そして1日の総インスリン投与量(TDD)で評価した。 治療開始1日後、Cペプチドは4.3から17.2ug/dayに増加し、6か月後では30.2ug/dayまで増加し、TDDは33から20units/dayまで減量することができた。しかし、血中、髄液中ともに乳酸/ピルビン酸比の改善は認められなかった。このようにミトコンドリア異常による糖尿病患者に対して、ピルビン酸は有用な治療の可能性が見込まれるが、さらに多くの患者で長期にわたる臨床試験による評価が必要となるだろう。
33The magnetic resonance imaging spectrum of Pelizaeus-Merzbacher disease: A multicenter study of 19 patients.
Sumida K, Inoue K, Takanashi J, Sasaki M, Watanabe K, Suzuki M, Kurahashi H, et al.
Brain Dev. 38(6):571-80. 2016.代表的な先天性大脳白質形成不全症であるPelizaeus-Merzbacher病(PMD)のMRI画像所見のスペクトラムについて、19例のPMD症例について遺伝学的および臨床的所見との関連性を含めて検討した。その結果、特に脳幹と内包におけるT2強調座像の所見が臨床重症度との関連性が高いことが明らかになった。
34Blood-based gene expression signatures of medication-free outpatients with major depressive disorder: integrative genome-wide and candidate gene analyses.
Hori H, Sasayama D, Teraishi T, Yamamoto N, Nakamura S, Ota M, Hattori K, et al.
Sci Rep. 6:18776. 2016.うつ病は遺伝要因と環境要因が複雑に相互作用することで発症する疾患である。本研究では、服薬していないうつ病患者と健常対照者においてマイクロアレイを用いた網羅的遺伝子発現研究を行い、うつ病において発現が変動する遺伝子を特定した。さらに、これらの発現変動遺伝子に対して詳細なバイオインフォマティクス解析を行い、うつ病の病態に関与する複数の遺伝子とそれらの相互作用ネットワークを見出した。
35Magnetic resonance umaging findings in Leigh syndrome with a novel compound heterozygous SURF1 gene mutation.
Kim Y, Koide R, Isozaki E, Goto Y.
Neurol Clin Neurosci 4(1):34-35. 2016.新規のSURF1変異をもつLeigh脳症患者で、典型的な両側基底核病変以外に、頭頂後頭葉に皮質及び白質の病変をMRIで認めた。

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2015年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1A splicing mutation of proteolipid protein 1 in Pelizaeus-Merzbacher disease.
Omata T, Nagai J, Shimbo H, Koizume S, Miyagi Y, Kurosawa K, Yamashita S, et al.
Brain Dev. 38(6):581-4. 2015.軽症型のPelizaeus-Merzbacher病症例を報告した。PLP1遺伝子解析にてイントロン3のc.454-9T>G変異を同定した。この変異によってスプライシング異常を引き起すこと考えられ、これらの以上スプライシング産物は全て早期終止コドンを持つと予想されることから、本患者の臨床症状が軽症型であること考えられた。
2Milder forms of muscular dystrophy associated with POMGN2 mutations.
Endo Y, Dong M, Noguchi S, Ogawa M, Hayashi YK, Kuru S, Sugiyama K, et al.
Neurol Genet. 1(4): e33. 2015.全エクソーム解析により、αジストログリカノパチー患者にPOMGNT2遺伝子多型を同定した。変異タンパク質の機能試験および相補試験により、見いだした遺伝子多型が真の病因変異であることを証明した。患者の臨床症状は、これまでのPOMGNT2遺伝子変異例にくらべ、きわめて軽症であったが、αジストログリカンの糖修飾パターンには特徴的であった。以上の結果は、POMGNT2遺伝子変異患者の病態は従来の報告よりも多岐にわたること、in vitroの解析により変異の病因を証明できることを示している。
3The role of ARX in human pancreatic endocrine specification
Gage BK, Asadi A, Baker RK, Webber TD, Wang R, Itoh M, Hayashi M, et al.
PLoS One. 10(12):e0144100. 2015.発生初期に発言するARX遺伝子の膵臓内分泌細胞の発生に関する研究である。ヒト膵臓組織と培養細胞を用いて、ARX遺伝子発現がランゲルハンス細胞の文化に関わっていることを明らかにした。
4Pathophysiology and emerging therapeutic strategies in Pelizaeus-Merzbacher Disease.
Osaka H, Inoue K.
Expert Opinion on Orphan Drugs. 3:1447-1459. 2015.Pelizaeus-Merzbacher病の分子細胞病態と現在開発研究が進んでいる治療法の開発状況について概説した。
5Biochemical markers subtyping major deoressive disorder
Kunugi H,Hori H, Ogawa S.
Psychiatry and Clinical Neurosciences. 69(10):597-608. 2015.うつ病の有望な生化学的マーカーとして中枢神経系のドパミン、視床下部?下垂体?副腎系、炎症系分子が重要であることを述べた総説。
6Dysferlinopathy Fibroblasts Are Defective in Plasma Membrane Repair.
Matsuda C, Kiyosue K, Nishino I, Hayashi YK.
PLoS Curr. pii:ecurrents.md.5865add2d766f39a0e0411d38a7ba09c. 2015.dysferlinは骨格筋細胞膜のタンパク質であり、その異常はdysferlinopathyを引き起こす。dysferlinopathyの分子病態の解明には、患者生検筋由来の筋芽、筋管細胞が使用されてきたが、我々は線維芽細胞の有用性を検討した。患者、SJLマウスの線維芽細胞では変異型dysferlinの発現レベルは低下しており、細胞膜修復に異常が観察されることを見出した。この結果から患者、SJLマウスの線維芽細胞はdysferlinopathyの研究ツールとして有用であると考えられる。
7Functional analysis of SERCA1b, a highly expressed SERCA1 variant in myotonic dystrophy type 1 muscle.
Zhao Y, Ogawa H, Yonekura SI, Mitsuhashi H, Mitsuhashi S, Nishino I, Toyoshima C, et al.
Biochim Biophys Acta. 1852(10):2042-2047. 2015.遺伝性疾患である、筋緊張性ジストロフィー(DM1)はこれまで多くの原因遺伝子が報告されておりSERCA1もその一つである。SERCA1はP-ATPaseの一つでCa2+を細胞質から内腔へ輸送することにより筋肉の弛緩に関与している。SERCA1はSERCA1aとSERCA1bの2つのバリアントがあり、これらの違いがどのように疾患に関与しているか、まだ分かっていない。今回の実験でSERCA1bはDM1の筋肉に強く発現していた。また二つのバリアントを強く発現させた細胞では、SERCA1aの方がATPaseとCa2+の取り込み活性がほぼSERCA1bの2倍であった。SERCA1a、SERCA1bの2つとも、親和性は同じようであるが、ミクロソーム環境に置いては、SERCA1bの方がより鋭敏に反応していた。これらのことからSERCA1bの異常発現がDM1のCa2+イオンの恒常性に異常をきたしていると仮定された。
8Molecular pathomechanisms and cell-type-specific disease phenotypes of MELAS caused by mutant mitochondrial tRNA(Trp).
Hatakeyama H, Katayama A, Komaki H, Nishino I, Goto Y.
Acta Neuropathol Commun. 3:52. 2015.新しいMELASの原因となるミトコンドリアDNA内のトリプトファン転移RNA内にある変異を同定した。患者由来のiPS細胞(ほぼ100%の変異率)は神経細胞への分化が著しく障害されており、病因性を示すためにiPS細胞を用いうることができた。
9Nemaline myopathy with KLHL40 mutation presenting as congenital totally locked-in state.
Kawase K, Nishino I, Sugimoto M, Togawa T, Sugiura T, Kouwaki M, Kibe T, et al.
Brain Dev. 37(9):887-890. 2015.KLHL40遺伝子変異を伴い、先天的に完全な閉じ込め状態であったネマリンミオパチーの一例について報告されている。重篤な先天性筋疾患では先天的に完全な閉じ込め状態を来しえるため注意が必要である。
102 Month-Old Male with Hypotonia.
Tanboon J, Viravan S, Hayashi YK, Nishino I, Sangruchi T.
Brain Pathol. 25(5):651-652. 2015.2ヶ月齢の先天性筋緊張低下・ミオパチ―様顔貌を呈した男児を報告した。この患児は、既報告のヘミ接合性MTM1遺伝子変異(c.141-144delAGAA)を持つX連鎖性ミオチュブラーミオパチーであった。
11Isolated inclusion body myopathy caused by a multisystem proteinopathy-linked hnRNPA1 mutation.
Izumi R, Warita H, Niihori T, Takahashi T, Tateyama M, Suzuki N, Nishiyama A, et al.
Neurol Genet. 1(3): e23. 2015本邦で初めてhnRNPA1遺伝子変異による封入体ミオパチーの例を見いだした。同遺伝子の変異は家族制ALSでも見いだされているが、本例 では骨格筋が選択的に冒されていた。
12miR-199a Links MeCP2 with mTOR Signaling and Its Dysregulation Leads to Rett Syndrome Phenotypes
Tsujimura K, Irie K, Nakashima H, Egashira Y, Fukao Y, Fujiwara M, Itoh M, et al.
Cell Reports. 12:1887-1901. 2015.MECP2遺伝子の発現制御にmiR-199aが関与し、mTORシグナル系の障害をもたらすことを明らかにした。これにより、レット症候群の小頭の発症分子機序の一端を解明した。
13Congenital muscular dystrophy with fatty liver and infantile-onset cataract caused by TRAPPC11 mutations: broadening of the phenotype.
Liang WC, Zhu WH, Mitsuhashi S, Noguchi S, Sacher M, Ogawa M, Shin HH, et al.
Skeletal Muscle. 5:29.eCollection. 2015.TRAPPC11遺伝子の新規変異によって、骨格筋障害・白内障・脂肪肝という表現型を来した例を世界で初めて見いだした。 筋ジストロフィー遺伝子パネルを作成し、次世代シークエンサーIonPGMを用いて網羅的に疾患原因既知遺伝子の解析を行うことによって、TRAPPC11 遺伝子に、これまでに知られていなかった変異をもつ例を見いだした。TRAPPC11遺伝子変異の報告はこれまでに1 報あるのみで、過去の論文では、シリア人1家系で見いだされた変異と北米フッター派2家系見いだされた変異が報告されていたが、今回の発見は、世界で第4 家系目でありアジアで初めての報告である。さらに、この家系では、これまで報告されている3家系と異なり、骨格筋だけでなく、白内障や肝臓の障害も認められた。遺伝子変異と臨床症状との関係を確立していく上で重要な発見であり、今後の病 気のメカニズムの解明や治療法の開発に寄与するものと考えられた。
14Mitochondrial respiratory dysfunction caused by a heteroplasmic mitochondrial DNA mutation blocks cellular reprogramming.
Yokota M, Hatakeyama H, Okabe S, Ono Y, Goto Y.
Hum Mol. Genet. 24:4698-4709. 20153243変異を持つ患者からiPS細胞を作成する研究において、変異率が90%以上の場合は樹立しにくいこと、しかし一度樹立できたものは通常のiPS細胞のように多能性などの性質を保持していることを見いだした。
15Myocerebrohepatopathy spectrum disorder due to POLG mutations: A clinicopathological report.
Montassir H, Maegaki Y, Murayama K, Yamazaki T, Kohda M, Ohtake A, Iwasa H, et al.
Brain Dev. 37:719-724. 2015.特異な乳児期発症のミトコンドリア病の原因としてPOLG遺伝子異常があることがわかった。病理学的、生化学的解析を加え、病態解明を行った。
16Case of dynamin 2 mutation-related sporadic centronuclear myopathy with peripheral neuropathy.
Kawasaki Y, Naba I, Azuma S, Yaka K, Moriya M, Nakano M, Nishino I, et al.
Neurology and Clinical Neuroscience. 3(4):131-133. 2015.重症筋無力症やギラン・バレー症候群に類似した臨床徴候を呈した、dynamin 2変異による中心核ミオパチーと末梢神経障害の53歳男性例を 報告した。
17Family with centronuclear myopathy as a result of a novel p.R369G DNM2 mutation.
Toyooka K, Kubo K, Fujimura H, Sakoda S, Tominaga K, Nishino I.
Neurology and Clinical Neuroscience. 3(4):161-162. 2015.DNM2遺伝子変異による中心核ミオパチーの日本人1家系2症例について、臨床症状と遺伝子変異の関係を報告した。2症例の臨床的特徴として、小児期発症で緩徐進行性であり、軽度の眼瞼下垂、顔面筋罹患、鼻声、頚部屈筋・下肢筋力低下、アキレス腱拘縮が挙げられた。本症例では、DNM2遺伝子において、c.1105C>G (p.R369G)変異がヘテロ接合で判明した。369番目のアミノ酸変異の既報告例と、本症例の臨床症状は類似していた。
18First Japanese case of muscular dystrophy caused by a mutation in the anoctamin 5 gene.
Kida H, Sano K, Yorita A, Miura S, Ayabe M, Hayashi YK, Nishino I, et al.
Neurology and Clinical Neuroscience. 3(4):150-152. 2015.ANO5遺伝子変異による三好型筋ジストロフィー症例を本邦で初めて報告した。症例は49歳の日本人男性で、小児期から下肢周囲径に左右差があり、外性器低形成を認めた。身体診察および画像検査から、骨格筋障害は下腿筋から始まり、後に大腿や傍脊柱筋に広がることがわかった。
19Increased cerebrospinal fluid fibrinogen in major depressive disorder.
Hattori K, Ota M, Sasayama D, Yoshida S, Matsumura R, Miyakawa T, Yokota Y, et al.
Sci Rep. 17:11412. 2015.脳脊髄液中のフィブリノーゲンがうつ病の特定の群において上昇していることが明らかになった。
20Increased protein and mRNA expression of resistin after dexamethasone administration.
Sasayama D, Hori H, Nakamura S, Yamamoto N, Hattori K, Teraishi T, Ota M, et al.
Horm Metab Res. 47:433-438. 2015身体的に健康な対象者24名において、ベースライン及びデキサメサゾン(合成グルココルチコイド)経口投与後の全血中mRNA発現量をマイクロアレイで解析したところ、耐糖能異常において重要な役割を果たすレジスチンの発現量がデキサメサゾン投与後に有意に増加していた。別の対象者12名においてベースライン及びデキサメサゾン経口投与後の血漿レジスチン濃度を測定したところ、デキサメサゾン投与後に有意な増加を認めた。RETN rs3219175のAアレルを保有する対象者は非保有者と比較して、全血中のレジスチンmRNA発現量及び血漿中レジスチン蛋白濃度が有意に高かったが、デキサメサゾン投与はいずれのrs3219175遺伝子型においても血中レジスチン濃度を増加させることが示された。本研究結果から、耐糖能異常の分子基盤としてストレスホルモンと遺伝子多型との相互作用が関与する可能性が示唆された。
21Property of Lysosomal Storage Disease Associated with Midbrain Pathology in the Central Nervous System of Lamp-2-Deficient Mice.
Furuta A, Kikuchi H, Fujita H, Yamada D, Fujiwara Y, Kabuta T, Nishino I, et al.
Am J Pathol. 185(6):1713-1723. 2015.Lamp-2遺伝子変異はDanon病、自己貪食空胞性ミオパチー、精神遅滞などを引き起こす。中枢神経系におけるLamp-2の機能を解明するため、Lamp-2欠損マウスを神経病理学的に解析した。Lamp-2欠損マウスの脳ではLamp-1、カテプシンがライソゾームに沈着しており、リポフスチン、糖脂質様物質の凝集が観察された。この結果から中枢神経系においてLamp-2は、ライソゾームによる様々な高分子の分解に関与し、酸化ストレスに対する防御にも関わると考えられる。
22Additive dominant effect of a SOX10 mutation underlies a complex phenotype of PCWH.
Ito Y, Inoue N, Inoue YU, Nakamura S, Matsuda Y, Inagaki M, Ohkubo T, et al.
Neurobiol Dis 80:1-14. 2015遺伝性の複合型神経堤症候群PCWHのトランスジェニックモデルマウスを初めて作成し、その病態機序を明らかにした。PCWHは、SOX10遺伝子の特定の変異によって生ずる先天性大脳白質形成不全症を含む様々な症状を呈する稀少疾患であるが、これまでモデル動物が存在せず、十分な病態解析がなされていなかった。本論文では、初めてPCWHのモデルマウスを作成し、、胎生期から成体に及ぶまでの詳細な組織学的解析を行うことにより、SOX10変異が優性に相加的効果をもたらす表現型にもたらすことを示した。
23Identification of Rare, Single-Nucleotide Mutations in NDE1 and Their Contributions to Schizophrenia Susceptibility.
Kimura H, Tsuboi D, Wang C, Kushima I, Koide T, Ikeda M, Iwayama Y, et al.
Schizophr Bull. 41:744-753. 2015.Nuclear distribution E homolog 1 (NDE1)の稀な遺伝子多型 S214F が統合失調症と関連し、軸索伸長に影響を与えるアミノ酸置換であることを見出した。
24Inflammatory myopathy with anti-signal recognition particle antibodies: case series of 100 patients.
Suzuki S, Nishikawa A, Kuwana M, Nishimura H, Watanabe Y, Nakahara J, Hayashi YK, et al.
Orphanet J Rare Dis. 10(1):61. 2015.抗SRP抗体陽性の壊死性ミオパチーが疑われる患者100名に対し、臨床的所見、自己抗体の調査及び、患者の臨床経過を観察した。その結果、壊死性ミオパチーのマーカーとして用いられる抗SRP抗体を7S RNA及びSRP54・HMGCRを用い免疫沈降/吸着法で検出し、患者の臨床経過や組織学的診断により多様性があることを報告した。また、特に幼児期からの発症患者は予後不良であった。本研究は臨床的に幅広い所見が見られ診断が困難である壊死性ミオパチーはの早期の正しい診断に貢献するものである。
25Necklace cytoplasmic bodies in hereditary myopathy with early respiratory failure.
Uruha A, Hayashi YK, Oya Y, Mori-Yoshimura M, Kanai M, Murata M, Kawamura M, et al.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 86(5):483-489. 2015.筋病理学的に筋原線維性ミオパチー(MFM)に分類された日本人患者187名(175家系)を対象に、早期呼吸障害を伴う遺伝性ミオパチー(HMERF)の原因遺伝子であるtitin遺伝子(エクソン 343)変異をスクリーニングした。HMERF患者 17名(14家系)が同定され、日本人MFMコホートにおいてtitin遺伝子変異が既知のMFM原因遺伝子の中で今のところ最も高頻度であることがわかった。またネックレス状に配列するcytoplasmic bodyがHMERFの優れた病理診断マーカーであることが示された(感度82%、特異度99%、陽性的中率93%)。なお、本稿はJNNP誌のEditorial commentaryで取り上げられた(J Neurol Neurosurg Psychiatry [Epub Oct 2014] ahead of print doi.org/10.1136/jnnp-2014-309009. PMID: 25313263)
26Congenital autophagic vacuolar myopathy is allelic to X-linked myopathy with excessive autophagy.
Munteanu I, Ramachandran N, Ruggieri A, Awaya T, Nishino I, Minassian BA.
Neurology. 84(16):1714-1716. 2015.Congenital Autophagic Vacuolar Myopathy (CAVM)がVMA21遺伝子変異によって引き起こされ、X-linked myopathy with excessive autophagy(XMEA)のアレル病であることを初めて示した。
27Ophthalmoplegia in congenital neuromuscular disease with uniform type 1 fiber.
Sanmaneechai O, Likasitwattanakul S, Sangruchi T, Nishino I.
Brain Dev. 37(4):459-462. 2015.CNMDU1は非常にまれな先天性ミオパチーであり、近位筋の筋力低下、腱反射の低下または消失、筋電図で筋原性変化を認め、病理所見ではタイプ1線維優位を呈する非進行性の疾患である。症例は筋緊張低下、呼吸障害、経口摂取困難、ミオパチー様顔貌、近位筋筋力低下、眼瞼下垂、外眼筋麻痺を呈する2歳男児で、筋生検では筋線維の大小不同がありほぼ全てタイプ1線維だった。全方位の外眼筋麻痺はCNMDU1の臨床所見として特徴的で、また外眼筋麻痺は重度であるが、非進行性の疾患であることを認識しておくことは重要である。
28Two siblings with cortical dysplasias: clinico-electroencephalographic features.
Fukasawa T, Kubota T, Maruyama S, Saito Y, Itoh M, Kakita A, Sugai K, et al.
Pediatr Int. 57:472-475. 2015.難治性てんかんを伴う脳形成障害の兄弟例の臨床病理学的報告を行った。極めて稀な症例であり、遺伝性とその多様性が想定されている。
29Reduced cerebrospinal fluid ethanolamine concentration in major depressive disorder.
Ogawa S, Hattori K, Sasayama D, Yokota Y, Matsumura R, Matsuo J, Ota M, et al.
Sci Rep. 5:7796. 2015.大うつ病性障害の診断や類型化に用いられる生化学的マーカーは今のところなく、いまだに問診によって行われている。我々はうつ病のバイオマーカーを探索するために、脳脊髄液中のアミノ酸およびその関連分子に着目して解析した。その結果、エタノールアミンの濃度はうつ病患者群で有意な減少を示し、約40%のうつ病患者が健常者群の下位5パーセンタイル値を基準とした値よりも低値を示した。患者群においてエタノールアミン低値群は髙値群と比べて重症度が高かった。また、エタノールアミン濃度はドパミン代謝物質であるホモバニリン酸やセロトニンの代謝物質である5-ヒドロキシインドール酢酸と有意な正の相関を示した。これらはうつ病の類型化マーカーあるいは状態依存的マーカーとなりうる可能性が示唆された。
30ECHS1 mutations cause combined respiratory chain deficiency resulting in Leigh syndrome.
Sakai C, Yamaguchi S, Sasaki M, Miyamoto Y, Matsushima Y, Goto Y.
Hum Mut. 36(2):232-9. 2015次世代シークエンサーを用いて約800のミトコンドリア関連タンパク質をコードする遺伝子配列を調べる方法を開発し、生化学的に複数の呼吸鎖酵素複合体の活性低下が認められ2症例に試みた。その結果、リー脳症の新しい病因としてECHS1遺伝子を同定した。
31Limb-girdle Muscular Dystrophy Type 2A with Mutation in CAPN3: The First Report in Taiwan
Wang CH, Liang WC, Minami N, Nishino I, Jong YJ.
PEDIATRICS AND NEONATOLOGY 56(1).62-65. 2015.台湾で初めて見出された33歳の肢帯型筋ジストロフィー2A型女性患者を報告した。15歳 に運動不耐で発症,来院時には動揺性歩行とGowers徴候を示した。筋病理では分葉線維を多数認めた。CAPN3遺伝子解析では,c2047_2050 del4, p.Lys683fsがホモ接合型で見出された。
32ABLIM1 splicing is abnormal in skeletal muscle of patients with DM1 and regulated by MBNL, CELF and PTBP1
Ohsawa N, Koebis M, Mitsuhashi H, Nishino I, Ishiura S.
GENES TO CELLS 20(2). 121-134. 2015.筋強直性ジストロフィー1型(DM1)は筋力低下、心筋障害を含む多様な症状を呈する遺伝性疾患である。今回の我々の研究により、actin-binding LIM protein 1 (ABLIM1)という蛋白がMBNL、CELF、PTBP1という蛋白による調節を受けている事、そしてABLIM1のスプライシング異常によりDM1の筋症状が生じる可能性がある事が示された。
33Dominant mutations in ORAI1 cause tubular aggregate myopathy with hypocalcemia via constitutive activation of store-operated Ca2+ channels
Endo Y, Noguchi S, Hara Y, Hayashi YK, Motomura K, Miyatake S, Murakami N, et al.
HUMAN MOLECULAR GENETICS. 24(3):637-648. 2015.細管集合体ミオパチー(Tubular aggregate myopathy, TAM)は、細管集合体を病理学的特徴とする遺伝性ミオパチーであるが、その遺伝学的背景はこれまでほとんど解明されていなかった。本研究では、常染色体優性遺伝形式を呈するTAM 3家系の遺伝子解析により、ORAI1遺伝子の機能獲得型変異がTAMを引き起こすことをつきとめた。ORAI1変異によりStore-operated Ca2+ entry (SOCE)チャネルが障害され、細胞外から細胞内にカルシウムイオンが過剰に流入することが疾患の原因であることを証明した。
34Kyphoscoliosis and easy fatigability in a 14-year-old boy
Tanboon J, Hayashi YK, Nishino I, Sangruchi T.
Neuropathology. 35(1).91-3. 2015.
35Hypoxic ischemic encephalopathy in a case of intranuclear rod myopathy without any prenatal sentinel event
Kawase K, Nishino I, Sugimoto M, Kouwaki M, Koyama N, Yokochi K.
BRAIN & DEVELOPMENT. 37(2):265-269. 2015.低酸素性虚血性脳症を合併した核内ロッドマイオパチーの一例を報告した。筋生検により核内ロッドが見られ、ACTA1に変異(c.449C>T)が認められた。MRIにより生後9日の時点で低酸素性虚血性脳症(HIE)が認められた。出産前には、脳損傷によって引き起こされるような異常が認められなかったことから、HIEは出生時の呼吸不全によって引き起こされたものと考えられた。この症例は、出生前での神経筋疾患早期発見、綿密な出産管理、呼吸管理の重要性を示唆している。
36DAG1 mutations associated with asymptomatic hyperCKemia and hypoglycosylation of α-dystroglycan
Dong M, Noguchi S, Endo Y, Hayashi YK, Yoshida S, Nonaka I, Nishino I.
Neurology. 84(3).273-279. 2015.ジストログリカノパチーが疑われる20例に対して全エクソーム解析を行い、高CK血 症1例にDAG1遺伝子の複合ヘテロ接合変異を見いだした。DAG1欠損細胞に変異遺伝子を導入したところ、細胞の表現型の回復が見られなかったため、これらの変異が病因性を持つことが証明された。この遺伝子欠損細胞を用いる遺伝子変異証明実験は、様々な遺伝子変異に広く利用できる可能性が考えられた。

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2014年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1Lack of genetic association between TREM2 and late-onset Alzheimer’s disease in a Japanese population
Miyashita A,Wen Y,Kitamura N,Matsubara E,Kawarabayashi T,Shoji M,Tomita N, et al.
Journal of Alzheimer's Disease. 41(4):1031-1038. 2014.日本人の高齢発症のアルツハイマー病の症例の脳のRNAの網羅的検索により、TREM2という遺伝子が関与していることが明らかとなった。
2Plasma L-tryptophan concentration in major depressive disorder: new data and meta-analysis.
Ogawa S, Fujii T, Koga N, Hori H, Teraishi T, Hattori K, Noda T, et al.
Journal of Clinical Psychiatry. 75(9):e906-e915. 2014.うつ病患者における血漿中トリプトファン値の低下が、自験例のデータおよび24報の先行研究を合わせてのメタアナリシスによって強固なエビデンスとともに明らかとなった。
3Effect of the common functional FKBP5 variant (rs1360780) on the hypothalamic-pituitary-adrenal axis and peripheral blood gene expression.
Fujii T, Hori H, Ota M, Hattori K, Teraishi T, Sasayama D, Yamamoto N, et al.
Psychoneuroendocrinology. 42.89-97. 2014.FKBP5 (FK506 binding protein5)は、ストレスホルモン(コルチゾール)分泌を調節するシャペロン分子であり、その遺伝子FKBP5の一塩基多型rs1360780 (C/T)のマイナーアリルTは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のリスクを高めるとされる。本研究は、一般成人(健常者)を対象として、この遺伝子多型と視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA系)によるストレス応答との関連をデキサメタゾン/CRH負荷テストを用いて検討した。その結果、この遺伝子多型は、年齢依存的にストレス応答に影響することを見出した。すなわち、高齢群(>50歳)と若年群(≦50歳)とに分けると、高齢群では、アリルTをもつ者は、もたない者と比較して、HPA系のコルチゾ-ル反応が低下していた。さらに、末梢血中のグルココルチコイド受容体(GR)の遺伝子発現(mRNA)が上昇しており、FKBP5の発現は低下していた。若年群では、このような関連は認められなかった。以上から、FKBP5の遺伝子多型rs1360780のTアレルは、年齢依存的にGRやFKBP5の発現、HPA系のコルチゾール反応に影響を与え、それによってPTSD発症リスクを高める可能性が示唆される。
4Cognitive effects of the ANK3 risk variants in patients with bipolar disorder and healthy individuals
Hori H, Yamamoto N, Teraishi T, Ota M, Fujii 2, Sasayama D, Matsuo J, et al.
Journal of Affective Disorders. 158:90-96. 2014.本研究では、ゲノムワイド関連解析において双極性障害と関連することが示されたANK3の一塩基多型rs10994336とrs10761482が、双極性障害の中間表現型である認知機能にどのような影響を与えているのかを調べた。Rs10761482のリスクアレルを保有している双極性障害患者では、保有していない患者に比べ、言語理解、論理的記憶、処理速度の成績が有意に低く、リスクアレルを保有している健常者では、保有していない健常者に比べ、実行機能と視覚性記憶の成績が有意に低いという結果が得られた。これらの結果は、ANK3のリスク多型は認知機能に影響を与えることで双極性障害と関連するという可能性を示唆する。
5Multiple deletions in mitochondrial DNA in a patient with progressive external ophthaloplegia, leukoencephalopathy and hypogonadism.
Ohnuki Y, Takahashi K, Iijima E, Takahashi W, Suzuki S, Ozaki Y, Kitao R, et al.
Inter Med. 53:1365-1369. 2014慢性進行性外眼筋麻痺症候群(CPEO)の病因として、ミトコンドリアDNAの欠失がよく知られている。CPEOに加えて、白質脳症、性腺機能障害の症状をもつ日本人31歳男性患者の骨格筋において、ミトコンドリアDNAの多重欠失を認め、その断点の塩基配列を決定した。
6Sialyllactose ameliorates myopathic phenotypes in symptomatic GNE myopathy model mice
Yonekawa T, Malicdan MC, Cho A, Hayashi YK, Nonaka I, Mine T, Yamamoto T, et al.
BRAIN. 137(10):2670-2679. 2014.縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)は、シアル酸生合成経路の律速酵素の遺伝的欠陥によって発症する慢性進行性の遺伝性筋疾患である。本症の発症にはシアル酸の低下が重要である。今回、ミオパチーを発症した50週齢の高齢DMRVマウスに対して、N-acetylneuraminic acid (NeuAc)またはシアリル乳糖(6’-SL)を30週間継続投与する試験を行い,表現型により治療効果を判定するとともに,投与化合物の効果の差異や特徴を明らかにした。自発運動量を50、65、72、80週齢で経時的に計測し、試験終了時に腓腹筋のサイズ、収縮力、筋病理と各組織シアル酸レベルを解析した。6’-SL投与によってマウスの自発運動量は経時的に回復した。6’-SLは骨格筋シアル酸レベルを著明に回復させ、腓腹筋サイズ、収縮力、筋病理を改善した。NeuAcの治療効果は6’-SLに及ばなかった。6’-SLはNeuAcに比し体内を留まる時間が長く、吸収された後それ自体として働くとともに、体内を循環している間にNeuAcへと代謝されさらに働くと考えられた。6’-SLのような化合物がもつ特性は、DMRV患者の実際の治療薬開発へ応用されるべきものである。
7Nationwide patient registry for GNE myopathy in Japan
Mori-Yoshimura M, Hayashi YK, Yonemoto N, Nakamura H, Murata M, Takeda SI, Nishino I, et al.
ORPHANET JOURNAL OF RARE DISEASES. 9:150. 2014.GNEミオパチーは緩徐に進行する常染色体劣性遺伝疾患である。 国立精神・神経医療研究センター病院で、遺伝学的にGNEミオパチーと診断された患者を、登録用紙によるアンケートを行い後方視的に調査した。121人の患者から回答を得て、これを基にして、日本のGNEミオパチーのRemudy(Registry of Musclular Dystrophies)を作成することができた。今後はこのRemudyが、GNEミオパチーの自然経過の解明や、臨床治験への登録募集に役立つだろう。
8Mutation profile of the GNE gene in Japanese patients with distal myopathy with rimmed vacuoles (GNE myopathy)
Cho A, Hayashi YK, Monma K, Oya Y, Noguchi S, Nonaka I, Nishino I.
JOURNAL OF NEUROLOGY NEUROSURGERY AND PSYCHIATRY. 85(8):914-917. 2014.212人の日本人GNEミオパチー患者の変異を同定した.患者の臨床症状を元に,表現型を遺伝子型の関連を調べた.63の異なる変異が見つかり,うち25が新たに見いだされた変異だった.c.1714G>C変異が最も多いであり,総変異アレルの48.3%を占めていた.この変異のホモ接合体が最も重い症状を示した.一方,二番目に多いc.527A>T変異は全体の22.4%を占めるが,患者の症状は軽度であり,特にホモ接合体は3名の患者のみしか見いだされていない.このことから,この変異のホモ接合体では症状を示さない例も存在する可能性を示唆していた.
9Muscle-specific calpain-3 is phosphorylated in its unique insertion region for enrichment in a myofibril fraction
Ojima K, Ono Y, Hata S, Noguchi S, Nishino I, Sorimachi H.
GENES TO CELLS. 19(11):830-841. 2014.肢帯型筋ジストロフィー2A型の原因タンパク質であるカルパイン3がリン酸化されていることを見いだした。このリン酸化によりカルパイン3の自己分解活性が若干抑えられること、リン酸化されたカルパイン3は主に筋原線維に含まれることがわかった。ミスセンス変異をもつ肢帯型筋ジストロフィー2A患者筋のカルパイン3では、リン酸化が低下していた。このことから、カルパイン3のリン酸化は病態に関与することが考えられた。
10Leiomodin-3 dysfunction results in thin filament disorganization and nemaline myopathy
Yuen M, Sandaradura SA, Dowling JJ, Kostyukova AS, Moroz N, Quinlan KG, Lehtokari VL, et al.
THE JOURNAL OF CLINICAL INVESTIGATION. 124(11):4693-4708. 2014.ネマリンマイオパチーの新規原因遺伝子としてLMOD3を報告した。エクソーム解析とサンガーシーケンスにより、本遺伝子の常染色体劣性変異が15家系に見出された。また、LMOD3がアクチンフィラメントを伸長することが示された。本患者において、アクチンフィラメントの短縮が確認された。これらの結果からLMOD3の機能喪失変異は、アクチンフィラメントの短縮を引き起こし、ネマリンマイオパチーを発症すると考えられた。
11GNE myopathy: New name and new mutation nomenclature
Huizing M, Carrillo-Carrasco N, Malicdan MC, Noguchi S, Gahl WA, Mitrani-Rosenbaum S, Argov Z, et al.
NEUROMUSCULAR DISORDERS. 24(5):387-389. 2014.埜中ミオパチー、縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー、inclusion body myopathy2、hereditary inclusion body myopathyは、すべてGNE遺伝子変異によって発症する同一の遺伝性ミオパチーである。臨床、研究分野での混乱をさけるために、これらの疾患名をGNEミオパチーに統一し、今後は国際的に唯一使用される疾患名となることが望ましい。また、GNE遺伝子由来の8つのmRNAスプライスバリアントのうち、hGNE1とhGNE2の2つが遺伝子変異のアノテーションに使用されてきた。hGNE2(753アミノ酸)は最長のmRNAであるが、その発見はhGNE1(722アミノ酸)よりも新しく、従ってこれまでの変異報告や基礎研究ではhGNE1が使用されることがほとんどであった。今後はhGNE2を使用する方向で統一することが望ましい。
12GNE myopathy: A prospective natural history study of disease progression
Mori-Yoshimura M, Oya Y, Yajima H, Yonemoto N, Kobayashi Y, Hayashi YK, Noguchi S, et al.
NEUROMUSCULAR DISORDERS. 24(5):380-386. 2014.国内外でGNEミオパチー(縁どり空胞を伴う遠位型ミオパチー)患者を対象とした臨床治験の準備が進んでいる。きたる臨床試験で用いる評価尺度を選別するために、GNEミオパチー患者24名を対象に、後方視的な自然歴調査を行った。その結果、6分間歩行テスト、徒手筋力テスト、粗大運動能力尺度、握力テスト、%予想努力性肺活量が治験の臨床評価尺度として有用で、病気の進行度をよく反映していることが判明した。またこの研究は、GNEミオパチーの後方視的自然歴調査としては初めての報告であり、GNEミオパチーは基本的に進行性の疾患であるが、心機能は侵されないことが明らかになった。
13Deep sequencing detects very-low-grade somatic mosaicism in the unaffected mother of siblings with nemaline myopathy
Miyatake S, Koshimizu E, Hayashi YK, Miya K, Shiina M, Nakashima M, Tsurusaki Y, et al.
NEUROMUSCULAR DISORDERS. 24(7):642-647. 2014.ACTA1遺伝子変異によるネマリンミオパチー患者の非罹患の親において、病因変異の体細胞モザイシズムが認められた。次世代シークエンサーの新たな有用性が示された。
14Congenital fiber type disproportion myopathy caused by LMNA mutations
Kajino S, Ishihara K, Goto K, Ishigaki K, Noguchi S, Nonaka I, Osawa M, et al.
JOURNAL OF THE NEUROLOGICAL SCIENCES. 340(1-2):94-98. 2014.LMNA遺伝子変異による筋線維タイプ不均等を呈する一群を報告した。筋病理学的に筋線維タイプ不均等が観察された場合はLMNA 遺伝子変異の可能性を考慮する必要がある。
15Clinical and histological findings associated with autoantibodies detected by RNA immunoprecipitation in inflammatory myopathies
Suzuki S, Yonekawa T, Kuwana M, Hayashi YK, Okazaki Y, Kawaguchi Y, Suzuki N, et al.
JOURNAL OF NEUROIMMUNOLOGY. 274(1-2):202-208. 2014.「筋炎の統合的診断プロジェクト」において、2010年10月から2013年3月までにRNA免疫沈降法で自己抗体検索を行った207例の血液サンプルのうち、99例(48%)が抗体陽性であった。99例から稀な抗体が陽性であった4例を除いた95例を抗体別に5群に分けると、Anti-SRP 41例(20%)、Anti-ARS 23例(11%)、Anti-Ku 9例(9%)、Anti-U1RNP 10例(10%)、Anti-SSA/SSB 12例(12%)となった。各群と自己抗体陰性群108例との間で、臨床及び病理学的所見の頻度を統計学的に比較検討した。Anti-SRP群では、発症年齢が若く、四肢筋力低下や頸部筋力低下、筋萎縮が好発で、CK上昇や炎症細胞浸潤を伴わない筋線維壊死をみることが多かった。Anti-ARS群は亜急性に発症し、筋外症状が好発であり、CRP上昇をみることが多かった。Anti-Ku及びAnti-U1RNP群はリウマチ性疾患を合併していることが多かった。炎症性筋疾患における自己抗体の測定意義は、神経内科領域ではリウマチ科や皮膚科ほど議論されていないばかりか、患者の臨床像は筋病理や自己抗体とは分けて考えられてきた。今回、我々はRNA免疫沈降法によって自己抗体を検索し、陽性となった抗体別に臨床及び病理学的特徴を明らかにした。
16Allele-specific Gene Silencing of Mutant mRNA Restores Cellular Function in Ullrich Congenital Muscular Dystrophy Fibroblast
Noguchi S, Ogawa M, Kawahara G, Malicdan MC, Nishino I.
MOLECULAR THERAPY-NUCLEIC ACIDS. 3:e171. 2014COL6A1遺伝子の点変異により引き起こされる優性変異型ウルリッヒ病に対するsiRNAによる治療の可能性を解析した。c.850G>A変異を標的とした、数種のsiRNAをデザインした。株化細胞での検索により、変異遺伝子に特異的なジーンサイレンシングを引き起こす2種類のsiRNAを選択した。患者細胞へのこれらsiRNAの導入により、変異COL6A1遺伝子が特異的に抑制され、コラーゲンVIを患者細胞周囲に発現させることに成功した。これらに結果は優性変異型ウルリッヒ病に対する変異遺伝子特異的siRNAの有効性を示すものである。
17Absence of beta-amyloid deposition in the central nervous system of a transgenic mouse model of distal myopathy with rimmed vacuoles
Anada RP, Wong KT, Malicdan MC, Goh KJ, Hayashi YK, Nishino I, Noguchi S.
AMYLOID. 21(2):138-9. 2014.縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)は進行性の筋力低下を示すが、骨格筋内に多数のベータアミロイドの沈着が観察される。一方、中枢神経系には異常が見られない。アルツハイマー病患者の脳ではベータアミロイドの蓄積が認められる。そこで、DMRVモデルマウス脳においてベータアミロイドの蓄積が認められるかを観察した。30匹以上のモデルマウスの脳及び脊髄サンプルを調べたが、ベータアミロイドの蓄積は認められなかった。DMRV患者脳でもベータアミロイドの蓄積はないと考えられた。
18A nationwide survey on marinesco-sjogren syndrome in Japan
Goto M, Okada M, Komaki H, Sugai K, Sasaki M, Noguchi S, Nonaka I, et al.
ORPHANET JOURNAL OF RARE DISEASES. 9(1):58. 2014マリネスコ‐シェーグレン症候群は小脳性運動失調、先天性白内障、知能障害、進行性筋力低下を四徴候とする常染色体劣性遺伝性の極めて稀な疾患である。我々は本邦における当疾患の患者において創始者効果がみられる事、SIL1遺伝子異常を伴う患者と伴わない患者では臨床症状に差異がみられず遺伝的多様性がある事を明らかにした。
19A girl with West syndrome and autistic features harboring a de novo TBL1XR1 mutation
Saitsu H, Tohyama J, Walsh T, Kato M, Kobayashi Y, Lee M, Tsurusaki Y, et al.
JOURNAL OF HUMAN GENETICS. 59(10):581-3. 2014.最近,TBL1XR1におけるde novo変異が2名の自閉症スペクトラム疾患に見つかった.この論文は,west症候群,Rett症候群様症状,自閉症的特徴を示した日本人女児についての報告である.5か月時に一連の発作を起こすまでは正常発達であった.7か月時の脳波でヒプスアリスミアを認め,west症候群と診断した.8か月時に常同的な手の動きが出現し,その後,4歳9か月時にはコミュニケーション障害等の自閉症的な特徴,多動,易興奮性を認めた.患児と両親の全エクソーム解析では, F box様領域の進化的に保存されているアミノ酸に生じたTBL1XR1のde novo変異[c.209G>A (p.Gly70Asp)]を認めた.TBL1XR1変異により,自閉症的な特徴をもち,Rett症候群様症状を呈するWest症候群を起こしうる.
20A case of adult-onset reducing body myopathy presenting a novel clinical feature, asymmetrical involvement of the sternocleidomastoid and trapezius muscles
Fujii T, Hayashi S, Kawamura N, Higuchi MA, Tsugawa J, Ohyagi Y, Hayashi YK, et al.
JOURNAL OF THE NEUROLOGICAL SCIENCES. 343(1-2):206-10. 2014.成人期発症の還元小体ミオパチー(reducing body myopathy; RBM)症例の臨床像を報告した。本症例は32歳女性で、FHL1遺伝子に変異を有し、胸鎖乳突筋と僧帽筋の非対称性萎縮が特徴的であった。FHL1遺伝子変異のある成人発症のRBM症例では、これまで胸鎖乳突筋、僧帽筋の非対称性萎縮は報告されておらず、貴重な報告である。
21Effect of the common functional FKBP5 variant (rs1360780) on the hypothalamic-pituitary-adrenal axis and peripheral blood gene expression
Fujii T, Hori H, Ota M, Hattori K, Teraishi T, Sasayama D, Yamamoto N, et al.
Psychoneuroendocrinology. 42:89-97. 2014.FKBP5 (FK506 binding protein5)は、ストレスホルモン(コルチゾール)分泌を調節するシャペロン分子であり、その遺伝子FKBP5の一塩基多型rs1360780 (C/T)のマイナーアリルTは、心的外傷後ストレス障害(PTSD)のリスクを高めるとされる。本研究は、一般成人(健常者)を対象として、この遺伝子多型と視床下部ー下垂体ー副腎系(HPA系)によるストレス応答との関連をデキサメタゾン/CRH負荷テストを用いて検討した。その結果、この遺伝子多型は、年齢依存的にストレス応答に影響することを見出した。すなわち、高齢群(>50歳)と若年群(≦50歳)とに分けると、高齢群では、アリルTをもつ者は、もたない者と比較して、HPA系のコルチゾ-ル反応が低下していた。さらに、末梢血中のグルココルチコイド受容体(GR)の遺伝子発現(mRNA)が上昇しており、FKBP5の発現は低下していた。若年群では、このような関連は認められなかった。以上から、FKBP5の遺伝子多型rs1360780のTアレルは、年齢依存的にGRやFKBP5の発現、HPA系のコルチゾール反応に影響を与え、それによってPTSD発症リスクを高める可能性が示唆される。
22MELAS phenotype associated with m3302A>G mutation in mitochondrial tRNA(Leu(UUR)) gene
Goto M, Komaki H, Saito T, Saito Y, Nakagawa E, Sugai K, Sasaki M, et al.
Brain Dev. 36(2):180-2. 2014.m3302A>G変異はこれまでに、6家系12 の患者で報告されているのみであり、その病型は、 全員成人発症の進行性ミオパチーに軽度の中枢神経障害を伴うものであった。今回、同変異を有する11歳男児で、MELASの臨床型を示す例を見出した。筋病理ではSSVを見出した。
23Psychological coping in depressed outpatients: association with cortisol response to the combined dexamethasone/CRH test
Hori H, Teraishi T, Ota M, Hattori K, Matsuo J, Kinoshita Y, Ishida I, et al.
J Affect Disord. 152-154:441-7. 2014.
24Cognitive effects of the ANK3 risk variants in patients with bipolar disorder and healthy individuals
Hori H, Yamamoto N, Teraishi T, Ota M, Fujii T, Sasayama D, Matsuo J, et al.
J Affect Disord. 158:90-6. 2014.本研究では、ゲノムワイド関連解析において双極性障害と関連することが示されたANK3の一塩基多型rs10994336とrs10761482が、双極性障害の中間表現型である認知機能にどのような影響を与えているのかを調べた。Rs10761482のリスクアレルを保有している双極性障害患者では、保有していない患者に比べ、言語理解、論理的記憶、処理速度の成績が有意に低く、リスクアレルを保有している健常者では、保有していない健常者に比べ、実行機能と視覚性記憶の成績が有意に低いという結果が得られた。これらの結果は、ANK3のリスク多型は認知機能に影響を与えることで双極性障害と関連するという可能性を示唆する。
25A primigravida with very-long-chain acyl-CoA dehydrogenase deficiency
Murata KY, Sugie H, Nishino I, Kondo T, Ito H.
Muscle Nerve. 49(2):295-6. 2014.妊娠を契機に心不全を発症した極長鎖脂肪酸アシルCoA脱水素酵素(VLCAD) 欠損症の34歳初妊婦を報告した.急性産後心筋症の例では,VLCAD欠損症を鑑別診断に含める必要がある
26ITIH3 polymorphism may confer susceptibility to psychiatric disorders by altering the expression levels of GLT8D1
Sasayama D, Hori H, Yamamoto N, Nakamura S, Teraishi T, Tatsumi M, Hattori K, et al.
J Psychiatr Res. 50:79-83. 2014.昨今指摘されているITIH3と精神病性障害の関係についてGWASで検討したところ、うつ病、統合失調症においてITIH3と関連するrs2535629の変異率の上昇が確認された
27Association between a C8orf13-BLK polymorphism and polymyositis/dermatomyositis in the Japanese population: an additive effect with STAT4 on disease susceptibility
Sugiura T, Kawaguchi Y, Goto K, Hayashi Y, Gono T, Furuya T, Nishino I, et al.
PLoS One. 9(3):e90019. 2014.以前の研究で、C13orf-BLK遺伝子上に存在するSNP (rs13277113) は、いくつかの自己免疫疾患患者において優位に認められた。今回の研究ではrs13277113が日本人皮膚筋炎、多発筋炎患者にも優位に認められ、疾患感受性を上昇させることを示唆された。さらに,以前に皮膚筋炎、多発筋炎発症との相関が認められたSTAT4遺伝子上のSNP (rs7574865) とSNP (rs13277113) 相乗的な作用を持つことが示唆された。本研究によりC13orf-BLK、STAT4遺伝子の皮膚筋炎、多発筋炎発症における重要性が示唆された。

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2013年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1Lack of association of EGR2 variants with bipolar disorder in Japanese population
Balan S, Yamada K, Iwayama Y, Toyota T, Ohnishi T, Maekawa M, Toyoshima M, et al.
Gene. 526(2):246-50. 2013.EGR2遺伝子と双極性障害との関連を日本人サンプルで検討したが、有意な関連は認められなかった。
2Intranuclear rods myopathy with autonomic dysfunction
Chou PC, Liang WC, Nonaka I, Mitsuhashi S, Nishino I, Jong YJ.
Brain Dev. 35(7):686-9. 2013.ACTA1遺伝子のc430C>T (pL144F)変異を伴う核内桿状体ミオパチーの2歳女児を報告した。乳児期には重度の発汗と顔面紅潮を呈した。食事、排便、排尿などを景気とする不整脈と高血圧も見られた。核内桿状体ミオパチー患者において自律神経異常を認める可能性があることには注意が必要である。
3An association analysis of the cardiomyopathy-associated 5 (CMYA5) gene with schizophrenia in a Japanese population
Furukawa M, Tochigi M, Otowa T, Arinami T, Inada T, Ujike H, Watanabe Y, et al.
Psychiatr Genet. 23(4):179-80. 2013.CMYA5遺伝子が統合失調症と関連するという既報について検討したが、日本人サンプルでは再現されなかった。
4Identification of KLHL41 Mutations Implicates BTB-Kelch-Mediated Ubiquitination as an Alternate Pathway to Myofibrillar Disruption in Nemaline Myopathy
Gupta VA, Ravenscroft G, Shaheen R, Todd EJ, Swanson LC, Shiina M, Ogata K, et al.
Am J Hum Genet. 93(6):1108-17. 2013.ネマリンミオパチー(NM)患者の全エクソンシークエンスを行いBTB-Kelch蛋白をコードするKLHL41(Kelch-like family memmber)遺伝子変異を検出した。変異形式により重症度が異なり、遺伝型と表現型の相関性が認められた。ゼブラフィッシュによる変異遺伝子蛋白の機能解析では、運動機能低下、筋原線維配列の乱れ、ネマリン小体形成などのNMの所見が認められた。BTB-Kelch蛋白の異常はNMのサルコメア構造異常の原因となることが証明された。
5In vitro circadian period is associated with circadian/sleep preference
Hida A, Kitamura S, Ohsawa Y, Enomoto M, Katayose Y, Motomura Y, Moriguchi Y, et al.
Sci Rep. 3:2074. 2013.ヒトの皮膚切片から培養した細胞内で時計遺伝子の発現リズム(体内時計リズム)を測定する方法を確立し、体内時計リズムの周期がクロノタイプ(朝型夜型)や休日の睡眠習慣(入眠覚醒時刻)と関連することを明らかにした。これまでヒトの体内時計リズムを正確に調べるには、特殊な施設、数週間におよぶ検査期間、生体試料の連続採取が必要であり、臨床研究に応用することは非常に困難であった。しかし、本研究で確立した方法は個人の生体試料(皮膚切片)に由来する培養細胞を利用するため、今までの方法とくらべて簡便に個々の体内時計リズムを測定することができる。この方法を活用することで、睡眠覚醒リズム障害(概日リズム睡眠障害)や冬季うつ病(季節性感情障害)など体内時計の障害によるさまざまな疾患の診断や治療候補物質のスクリーニングが可能となり、患者個人に合った治療の提供へつながることが期待される。
6Relationship of temperament and character with cortisol reactivity to the combined dexamethasone/CRH test in depressed outpatients
Hori H, Teraishi T, Sasayama D, Hattori K, Hashikura M, Higuchi T, Kunugi H.
J Affect Disord. 147(1-3):128-36. 2013.HPA系の過剰活動がうつ病で示唆されているが、報告は一致せず、非定型うつ病ではむしろ低下しているという報告がある。この不一致はパーソナリティの違いによるものかどうか検討するため、うつ病のDEX/CRHテストとTCIとの関連を検討した。その結果、過剰抑制型と比べ不完全抑制型では協調性が顕著に高かった。パーソナリティはコルチゾールの反応性に影響を及ぼすことが判明した。
7Unusual exocrine complication of pancreatitis in mitochondrial disease
Ishiyama A, Komaki H, Saito T, Saito Y, Nakagawa E, Sugai K, Itagaki Y, et al.
Brain Dev. 35(7):654-9. 2013.ミトコンドリア病の膵合併症として糖尿病は良く知られているが、膵炎の合併例の報告は少ない。今回、ミトコンドリア病に繰り返す膵炎を合併した2例の報告とともに、膵炎治療よりもミトコンドリア病に対する治療が膵炎の再発予防に有効であったことを、文献的考察とあわせて報告した。
8Additional evidence that the ryanodine receptor gene (RYR1) causes malignant hyperthermia and severe skeletal malformations
Kakisaka Y, Haginoya K, Takahashi Y, Ochiai T, Fujiwara I, Kikuchi A, Wakusawa K, et al.
Am J Med Genet A. 161A(1):234-5. 2013.悪性高熱の既往があり、脊椎肋骨異骨症をともなう6歳女児。カルシウム誘発性カルシウム遊離速度が亢進し ており、RYR1遺伝子に p R2508C変異を認めた。RYR1変異により骨奇形を伴う悪性高熱があるとする従来の報告が確認されたが、報告例とは異なり、本例では特異な筋病理学的変化は認めなかった。
9Elevated urinary beta2 microglobulin in the first identified Japanese family afflicted by X-linked myopathy with excessive autophagy
Kurashige T, Takahashi T, Yamazaki Y, Nagano Y, Kondo K, Nakamura T, Yamawaki T, et al.
Neuromuscul Disord. 23(11):911-6. 2013.日本人で初めて、過剰な自己貪 食を伴うX連鎖性ミオパチー例を見出した。発端者は52歳男性で、40年来の進行性近位筋筋力低下を呈していた。 β2ミクログロブリンは尿 中で高値であったが、血中では正常であった。VMA21遺伝子にc164-7T>G変異をヘミ接合型で有していた。母方伯父2名 も同様の臨床病理所見を呈していた。腎障害がないにも関わらず β2ミクログロブリンが高値を示すのは、尿細管遠位部における尿の酸性化障害を原因としている可能性 がある。 β2ミクログロブリンは過剰な自己貪食を伴うX連鎖性ミオパチーの診断に有用なマーカーとなる可能性がある。
10Exome sequencing as a diagnostic tool to identify a causal mutation in genetically highly heterogeneous limb-girdle muscular dystrophy
Matsuura T, Kurosaki T, Omote Y, Minami N, Hayashi YK, Nishino I, Abe K.
J Hum Genet. 58(8):564-5. 2013.肢帯型筋ジストロフィー患者の一例において全エクソームシークエンス解析を行い、CAPN3遺伝子にc1795dupA (pThr599Asnfs*33)変異をホモ接合型で認めた。全エクソームシークエンス解析は肢帯型筋ジストロフィーの遺伝子診断に有用である。
11Megaconial congenital muscular dystrophy due to loss-of-function mutations in choline kinase beta
Mitsuhashi S, Nishino I.
Curr Opin Neurol. 26(5):536-43. 2013.コリンキナーゼベータ遺伝子の機能喪失変異はミトコンドリア巨大化を伴う先天性筋ジストロフィーを引き起こす。これまでに19例の患者が報告されており、皮膚症状を示す症例や軽少例など、臨床症状が比較的多彩であることがわかってきている。これまでに報告されている変異と臨床像のまとめ、および考えられる病気の発症メカニズムについて解説する。
12Mitochondrial complex III deficiency caused by a homozygous UQCRC2 mutation presenting with neonatal-onset recurrent metabolic decompensation
Miyake N, Yano S, Sakai C, Hatakeyama H, Matsushima Y, Shiina M, Watanabe Y, et al.
Hum Mutat. 34(3):446-52. 2013.新生児に重篤な乳酸アシドーシスで発症したミトコンドリア病のメキシコ人家系において、エキソーム解析でミトコンドリア複合体Ⅲコアタンパク2の変異を同定し報告した。この報告は複合体IIIコアタンパク異常を証明した最初の報告である。
13Respiratory dysfunction in patients severely affected by GNE myopathy (distal myopathy with rimmed vacuoles)
Mori-Yoshimura M, Oya Y, Hayashi YK, Noguchi S, Nishino I, Murata M.
Neuromuscul Disord. 23(1):84-8. 2013.GNEミオパチー患者における呼吸機能低下を39名の患者(男性13名、女性26名)について診療録を後方視的に検討した。%努力肺活量(%FVC)の平均値は92であったが、12名(31%)の患者で%FVCが80%未満であった。これら12名の患者のうち11名(92%)は車椅子を使用していた。これらの患者は、平均10年早期発症であり、クレアチンキナーゼ値が呼吸機能正常の患者よりも低かった(56 vs 279)。2例は重症の呼吸不全を呈しており非侵襲的陽圧換気が必要としていた。N-アセ チルマンノサミンキナーゼドメインにホモ接合型変異を有する例は%FVCが低い傾向にあった。
14Fatal hepatic hemorrhage by peliosis hepatis in X-linked myotubular myopathy: a case report
Motoki T, Fukuda M, Nakano T, Matsukage S, Fukui A, Akiyoshi S, Hayashi YK, et al.
Neuromuscul Disord. 23(11):917-21. 2013.排痰補助装置使用後に致死性の急性肝出血を来したX連 鎖性ミオチュブラーミオパチーの一例を報告した。剖検では、肝臓紫斑病の所見が確認された。X 連鎖性ミオチュブラーミオパチーでは、肝出血を避けるべく定期的な肝機能検査と腹部イメージング検査が望まれる。
15Congenital generalized lipodystrophy type 4 with muscular dystrophy: clinical and pathological manifestations in early childhood
Murakami N, Hayashi YK, Oto Y, Shiraishi M, Itabashi H, Kudo K, Nishino I, et al.
Neuromuscul Disord. 23(5):441-4. 2013.先天性脂肪萎縮症VI型はPTRF遺伝子変異による全身性脂肪萎縮症とミオパチーを合併する希な疾患である。我々は乳児期より運動発達遅滞と高CK血症を示し、PTRF変異を見いだした男児を報告した。3才11ヶ月まで経過観察を行っているが、インスリン抵抗性は病初期には認められず 、3才11ヶ月時点で見いだされるようになった。また、本疾患では通常、骨格筋のカベオリンー3の発現が二次的に低下するが、16ヶ月時に行った本患児の生検筋ではその染色性が比較的保たれており、カベオリンー3の発現低下は疾患の進行に関連するものと考えられた。
16Mutations in KLHL40 are a frequent cause of severe autosomal-recessive nemaline myopathy
Ravenscroft G, Miyatake S, Lehtokari VL, Todd EJ, Vornanen P, Yau KS, Hayashi YK, et al.
Am J Hum Genet. 93(1):6-18. 2013.ネマリンミオパチー未診断例6家系を対象に全エクソームシークエンス解析を行い、 KLHL40遺伝子に変異を見出した。追加家系を含む全143家系のうち、28家系に19の異なる変異を見出した。特に日本人患者 コーホートにおいては、28%の患者でKHLH40変異が見出され、乳児重症型ネマリンミオパチーの最も頻度の高い原因遺伝子である ことが判明した。
17De novo mutations in the autophagy gene WDR45 cause static encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood
Saitsu H, Nishimura T, Muramatsu K, Kodera H, Kumada S, Sugai K, Kasai-Yoshida E, et al.
Nat Genet. 45(4):445-9. 2013.小児期に発症する変性疾患であるStatic encephalopathy of childhood with neurodegeneration in adulthood (SENDA) の原因遺伝子を当センター病院の症例を含めた日本人の症例で同定した。
18Genome-wide association study of schizophrenia using microsatellite markers in the Japanese population
Shibata H, Yamamoto K, Sun Z, Oka A, Inoko H, Arinami T, Inada T, et al.
Psychiatr Genet. 23(3):117-23. 2013.28601のゲノム上のマイクロサテライトマーカーを用いて日本人統合失調症の全ゲノム解析を行った。その結果、SLC23A3, CNPPD1, FAM134Aの3遺伝子が統合失調症遺伝子として有望であることが示唆された。
19Juvenile autophagic vacuolar myopathy - a new entity or variant?
Stenzel W, Nishino I, von Moers A, Kadry MA, Glaeser D, Heppner FL, Goebel HH.
Neuropathol Appl Neurobiol. 39(4):449-53. 2013.自己貪食空胞性ミオパチーのイエメン人14歳男児例を報告した。下肢近位筋の軽度筋力低下を示した。筋病理ではAChE発現を伴う自己貪 食空胞が認められた。LAMP-2遺伝子およびVMA21遺伝子に変異はなく、新たな自己貪食空胞性ミオパチーである可能性が示唆された。
20Prednisolone improves walking in Japanese Duchenne muscular dystrophy patients
Takeuchi F, Yonemoto N, Nakamura H, Shimizu R, Komaki H, Mori-Yoshimura M, Hayashi YK, et al.
J Neurol. 260(12):3023-9. 2013.神経筋疾患患者情報登録(Remudy)の患者データの詳細な解析を行い、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)患者におけるステロイドホルモン薬の歩行機能延長効果を検討した。これまでに公表されている研究の中では世界最大規模の横断的観察研究であり、ステロイド使用群(245人)は、ステロイド未使用群(315人)と比較して、歩行可能期間が11か月延長していた。本研究によりはじめて、我が国のDMD患者におけるステロイド治療の長期効果を実証することができた。
21Possible association between common variants of the phenylalanine hydroxylase (PAH) gene and memory performance in healthy adults
Teraishi T, Sasayama D, Hori H, Yamamoto N, Fujii T, Matsuo J, Nagashima A, et al.
Behav Brain Funct. 9:30. 2013.必須アミノ酸であるフェニルアラニンを代謝するフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)は、カテコールアミンの合成に必要である。 PAHの稀な変異型は、常染色体劣性遺伝疾患のフェニルケトン尿症(PKU)の原因であり、それは知的障害を含む精神神経症状を合併する。今回我々は、日本人のサンプルを用い、PAHのSNPと記憶機能の関連について検討した。対象は599人の健康成人(男性166人、女性433人、平均年齢43.88±15.5歳)で、記憶機能評価にはウエクスラー記憶検査(WMS ?R)を用いた。PAHのタグSNP ( rs1722387 、 rs3817446 、 rs1718301 、 rs2037639 、 rs10860936とrs11111419 )のジェノタイピングを行った。rs2037639と言語記憶との間に有意な関連がみられた(性と年齢を補正した共分散分析:p = 0,0013, ボンフェローニ補正:p = 0,0013 < 0,0017 =0,05/30tests)。GG型は、AA 型とAG型よりも言語記憶が有意に低下していた(p = 0,00099 )。rs2037639とrs10860936を含むハプロタイプは、言語記憶と有意に関連していた(global p = 0,0091)。今回の知見は、健康成人において、PAHのコモンSNPが言語記憶と関連していることを示唆している。PAHもしくはその近隣の未知の機能的SNPが記憶機能に影響を与えている可能性がある。
22Replication in a Japanese population that a MIR30E gene variation is associated with schizophrenia
Watanabe Y, Iijima Y, Egawa J, Nunokawa A, Kaneko N, Arinami T, Ujike H, et al.
Schizophr Res. 150(2-3):596-7. 2013.マイクロRNAをコードするMIR30E遺伝子が統合失調症と関連するという既報を、日本人サンプル(2729人の統合失調症患者と2844人の健常者)で再現した。
23Rapidly progressive scoliosis and respiratory deterioration in Ullrich congenital muscular dystrophy
Yonekawa T1, Komaki H, Okada M, Hayashi YK, Nonaka I, Sugai K, Sasaki M, et al.
J Neurol Neurosurg Psychiatry. 84(9):982-8. 2013.ウルリッヒ型先天性筋ジストロフィーは非常に稀少な疾病で、自然歴はよくわかっていなかった。我々は、全国規模で本症患者の全国調査を行い、33名の臨床情報を解析し、歩行能力、呼吸機能、側弯症の自然歴を明らかにしました。今回明らかにした自然歴は、患者の診療に役立つだけでなく臨床試験の基礎的資料としても役立つものである。

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2012年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1Abnormal maturation and differentiation of neocortical neurons in epileptogenic cortical malformation: unique distribution of layer-specific marker cells of focal cortical dysplasia and hemimegalencephaly
Arai A, Saito T, Hanai S, Sukigara S, Nabatame S, Otsuki T, Nakagawa E, et al.
Brain Res. 1470:89-97. 2012.難治性てんかんの原因となる皮質異形性と片側巨脳症はともに神経細胞の遊送障害が成因である。外科切除標本を用いて層特異的に発現する3つのタンパク質を免疫組織化学的に検討した。その結果皮質異形性において3つのパターンに分類でき、また片側巨脳症においては層をまたいで瀰漫性に染色されるなど、それぞれが異なった染色パターンを示し、その成因が異なることが強く示唆された。
2Misfolded SOD1 forms high-density molecular complexes with synaptic molecules in mutant SOD1-linked familial amyotrophic lateral sclerosis cases
Araki T, Nagano S, Tateno M, Kaido M, Ogata K, Arima K.
J Neurol Sci. 314(1-2):92-6. 2012.SOD1変異による遺伝性筋萎縮性側索硬化症(FALS)患者の剖検脳組織の生化学的解析により、変異型SOD1はシナプス領域に存在する多くの蛋白と強い結合した蛋白複合体を形成していることを示し、このような変化がFALSにおける神経機能低下機序の一部となっている可能性を示した。
3Mutations in the satellite cell gene MEGF10 cause a recessive congenital myopathy with minicores
Boyden SE, Mahoney LJ, Kawahara G, Myers JA, Mitsuhashi S, Estrella EA, Duncan AR, et al.
Neurogenetics. 13(2):115-24. 2012.呼吸障害と側弯を伴うミニコア病の家系において、MEGF10遺伝子のヘテロ接合型ミスセンス変異を見出した。同様の臨床病理学的変化を伴う例をスクリーニングしたところ、更に2家系においてMEGF10遺伝子変異を見出した。
4Association between the functional polymorphism (C3435T) of the gene encoding P-glycoprotein (ABCB1) and major depressive disorder in the Japanese population
Fujii T, Ota M, Hori H, Sasayama D, Hattori K, Teraishi T, Yamamoto N, et al.
J Psychiatr Res. 46(4):555-9. 2012.私たちは今回、血液脳関門のストレスホルモン排出ポンプであるP 糖タンパク質(ABCB1)の機能低下型遺伝子について、日本人の「大うつ病性障害」患者631 人、健常者1100 人を対象として解析し、機能低下型対立遺伝子(アリル)T3435(rs045642)は患者群に有意に多くみられること、さらに父親と 母親双方からこのアリルを受け継いでいる人の頻度も、患者に有意に多くみられることを示した。この結果が他のサンプルでも再現されれば、うつ病発症の分子メカニズム解明と、その後の治療への応用を切り開く上で、重要な意味を持つ。
5A novel mutation in the LMNA gene causes congenital muscular dystrophy with dropped head and brain involvement
Hattori A, Komaki H, Kawatani M, Sakuma H, Saito Y, Nakagawa E, Sugai K, et al.
Neuromuscul Disord. 22(2):149-51. 2012.LMNA新規変異(c 1330-1338dup9)によるdrop headを呈した先天性ミオパチー症例を報告した。興味深いことに本症例は頭部MRIで原因不明の白質の高信号域が認められた。LMNA変異による先天性筋ジストロフィーはアジア人では初めての報告である。歩行可能であるにもかかわらず、頚部筋力低下の著しい場合、LMNA変異検索を行う必要がある。
6Blood CADPS2DeltaExon3 expression is associated with intelligence and memory in healthy adults
Hattori K, Tanaka H, Yamamoto N, Teraishi T, Hori H, Kinoshita Y, Matsuo J, et al.
Biol Psychol. 89(1):117-22. 2012.CADPS2はBDNFやモノアミンの放出に関わる分子で、その変異体CADPS2?Exon3は自閉症の血液に発現していることが報告されている。我々は前回の研究にて、統合失調症の死後脳でCADPS2やCADPS2?Exon3の発現が増えていることを見出したが、今回は健常者の脳機能とそれらの分子の血中の発現との関係を調べた。その結果、健常成人にも一定数のCADPS2?Exon3陽性者がおり、陽性者は院生者に比べIQや記憶力が低いことが判明した。このようにCADPS2?Exon3が成人の知的機能にも関わることが示唆され、その測定が発達障害や知的機能のマーカーとして使用できる可能性が見出された。
7Concomitant microduplications of MECP2 and ATRX in male patients with severe mental retardation
Honda S, Satomura S, Hayashi S, Imoto I, Nakagawa E, Goto Y, Inazawa J; Japanese Mental Retardation Consortium.
J Hum Genet. 57(1):73-7. 2012.精神遅滞に関係する2つの遺伝子MeCP2とATR-Xとをそれぞれ含む領域の重複が認められた。
8Effects of the CACNA1C risk allele on neurocognition in patients with schizophrenia and healthy individuals
Hori H, Yamamoto N, Fujii T, Teraishi T, Sasayama D, Matsuo J, Kawamoto Y, et al.
Sci Rep. 2:634. 2012.2008年に発表された大規模なゲノムワイド関連解析においてCACNA1Cの一塩基多型rs1006737は双極性障害と関連することが示され、その後の複数の検討によりこの多型は統合失調症とも関連することが示されてきている。そこで本研究では、この多型が統合失調症の中間表現型である認知機能にどのような影響を与えているのかを調べた。リスクアレルを保有している統合失調症患者では、保有していない患者に比べ、言語性記憶の成績が有意に低いという結果が得られ、この多型は認知機能に影響を与えることで統合失調症と関連するという可能性が示唆された。
9Association of SNPs linked to increased expression of SLC1A1 with schizophrenia
Horiuchi Y, Iida S, Koga M, Ishiguro H, Iijima Y, Inada T, Watanabe Y, et al.
Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 159B(1):30-7. 2012.SLC1A1はグルタミン酸トランスポーターEAAT3/EAAC1をコードする遺伝子である。本研究は、この遺伝子と統合失調症との関連を19のタグSNPsを用いて解析した。その結果、rs7022369と有意な関連を示した(多重比較補正)。さらに、死後脳の遺伝子発現をみたところ、この多型のリスク遺伝子はトランスポーターの発現上昇と関連していた。以上から、SLC1A1は統合失調症の病態に関与することが示唆された。
10Novel Mutations of the GNE Gene in Distal Myopathy with Rimmed Vacuoles Presenting with Very Slow Progression
Ikeda-Sakai Y, Manabe Y, Fujii D, Kono S, Narai H, Omori N, Nishino I, et al.
Case Rep Neurol. 4(2):120-5. 2012.GNE遺伝子にc 302G>A (p R101H)及びc 617-4A>Gの複合ヘテロ接合型変異を有する縁取り空胞を伴う遠位型ミオパチー(DMRV)の日本人一家系を報告した。家系内の3人の患者はそれぞれ36, 34, 39歳でも依然として歩行可能であった。DRMVの臨床スペクトラムは従来考えられてたよりも幅広い可能性がある。
11A pediatric patient with myopathy associated with antibodies to a signal recognition particle
Kawabata T, Komaki H, Saito T, Saito Y, Nakagawa E, Sugai K, Sasaki M, et al.
Brain Dev. 34(10):877-80. 2012.15歳のSRPミオパチー例を報告した。発症後3ヶ月で著明に進行する近位筋有意の筋力低下と筋萎縮ならびに著明なCK値上昇を認めた。SRPミオパチー小児例はまれであるが、早期発見が予後改善に重要である。
12Selective muscle involvement in a family affected by a second LIM domain mutation of fhl1: an imaging study using computed tomography
Komagamine T, Kawai M, Kokubun N, Miyatake S, Ogata K, Hayashi YK, Nishino I, et al.
J Neurol Sci. 318(1-2):163-7. 2012.FHL1変異を有し母、娘、息子が発症している一家系で全身の画像解析を行い、罹患筋の分布を検討した。症状の強さには男女差が見られたものの、一致して上腕および大腿の屈筋群が伸筋群よりも早期に侵され、さらに、傍脊柱筋が強く変性していた。このような分布はFHL1変異に特徴的な所見である可能性がある。
13Recessive RYR1 mutations in a patient with severe congenital nemaline myopathy with ophthalomoplegia identified through massively parallel sequencing
Kondo E, Nishimura T, Kosho T, Inaba Y, Mitsuhashi S, Ishida T, Baba A, et al.
Am J Med Genet A. 158A(4):772-8. 2012.眼球運動障害と重症先天型ネマリンミオパチーを伴う1例に対して、次世代型シークエンサーを用いた解析を行い、RYR1遺伝子に劣性型変異を見出した。
14Importance of CAG repeat length in childhood-onset dentatorubral-pallidoluysian atrophy
Maruyama S, Saito Y, Nakagawa E, Saito T, Komaki H, Sugai K, Sasaki M, et al.
J Neurol. 259(11):2329-34. 2012.小児期発症の歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症の患者9人について、CAGリピート数と発症年齢(不随意運動やてんかん出現などの相関ばかりででなく、車椅子生活になる年齢、チューブ栄養になる年齢も相関のあることを示した。
15Myotonic dystrophy type 2 is rare in the Japanese population
Matsuura T, Minami N, Arahata H, Ohno K, Abe K, Hayashi YK, Nishino I.
J Hum Genet. 57(3):219-20. 2012.1型筋強直性ジストロフィーが否定されておりミオトニアを伴う34例、既知原因遺伝子に変異のない肢帯型筋ジストロフィー119例の計153例を対象として、2型筋強直性ジストロフィー(DM2)の原因であるCCTGアレル伸長の有無を調べた。全例で伸長を認めなかったこと。本邦では DM2 は希と考えられる。
16Rimmed vacuoles in Becker muscular dystrophy have similar features with inclusion myopathies
Momma K, Noguchi S, Malicdan MC, Hayashi YK, Minami N, Kamakura K, Nonaka I, et al.
PLoS One. 7(12):e52002. 2012.筋病理で縁取り空胞を示す12名のベッカー型筋ジストロフィー患者を見いだした。11名の患者でDMD遺伝子にエクソン45-48に欠失を持ち、臨床的には非常に軽症であった。興 味深いことにベッカー型筋ジストロフィー患者の筋線維に見られる縁 取り空胞は、自己貪食空胞とユビキチン化タンパク質の蓄積等、他の封入体ミオバチーのものと同様の性質を示した。
17Clinicopathological features of centronuclear myopathy in Japanese populations harboring mutations in dynamin 2
Mori-Yoshimura M, Okuma A, Oya Y, Fujimura-Kiyono C, Nakajima H, Matsuura K, Takemura A, et al.
Clin Neurol Neurosurg. 114(6):678-83. 2012.血縁関係のない22名の日本人中心核ミオパチー患者についてDMN2遺伝子解析を行った。その結果、p,E368K, p,R369W, p,R465Wの3つ変異が4家系で見出された。DNM2変異を有する患者では、下腿後面筋萎縮と凹足が特徴的であった。病理学的には、放射状の筋原線維配列、タイプ1線維萎縮、タイプ1線維優位、タイプ2C線維が認められた。
18Imbalance of interneuron distribution between neocortex and basal ganglia: consideration of epileptogenesis of focal cortical dysplasia
Sakakibara T, Sukigara S, Otsuki T, Takahashi A, Kaneko Y, Kaido T, Saito Y, et al.
J Neurol Sci. 323(1-2):128-33. 2012.皮質異形性を伴う難治てんかん外科治療例の切除標本の病理学的検討により、大脳皮質と大脳基底核における神経細胞(inter neuron)の分布の異常があることが示され、難治てんかんの発生機序に関し貴重な知見が得られた。
19Delayed maturation and differentiation of neurons in focal cortical dysplasia with the transmantle sign: analysis of layer-specific marker expression
Sakakibara T, Sukigara S, Saito T, Otsuki T, Takahashi A, Kaneko Y, Kaido T, et al.
J Neuropathol Exp Neurol. 71(8):741-9. 2012.皮質全層性の病変を伴う皮質異形性症のタイプIIAとタイプIIBについて、詳細な細胞特異的な発現マーカーを用いて組織化学的に検討した。その結果、タイプIIBがタイプIIAに比較して、上層部の細胞が未熟性が強いことで成因の異なることが強く示唆された。
20Heteroplasmic m 1624C>T mutation of the mitochondrial tRNA(Val) gene in a proband and his mother with repeated consciousness disturbances
Sangatsuda Y, Nakamura M, Tomiyasu A, Deguchi A, Toyota Y, Goto Y, Nishino I, et al.
Mitochondrion. 12(6):617-22. 2012.ミトコンドリアDNAのバリン転移RNA領域のm 1624C>T変異を36歳女性患者に認め、患者は繰り返す意識消失発作、認知機能低下、人格変容を示した。
21Negative correlation between cerebrospinal fluid oxytocin levels and negative symptoms of male patients with schizophrenia
Sasayama D, Hattori K, Teraishi T, Hori H, Ota M, Yoshida S, Arima K, et al.
Schizophr Res. 139(1-3):201-6. 2012.65名の男性被験者(統合失調症患者27名、大うつ病患者17名、健常対照者21名)に対し、髄液中のオキシトシン濃度を測定した。各群間でオキシトシン濃度に有意差は認めなかったが、統合失調症患者においては第二世代抗精神病薬の内服用量と髄液中オキシトシン濃度との間に有意な負の相関を認めた。また、統合失調症患者のPANSS陰性症状スコアと髄液中オキシトシン濃度との間に有意な負の相関がみられた。
22Association of cognitive performance with interleukin-6 receptor Asp358Ala polymorphism in healthy adults
Sasayama D, Hori H, Teraishi T, Hattori K, Ota M, Matsuo J, Kawamoto Y, et al.
J Neural Transm. 119(3):313-8. 2012.IL-6受容体遺伝子多型Asp358Alaと認知機能との関連を調べるために、健常成人576名に対しウェクスラー成人知能検査を施行した。Asp/Asp遺伝子型の対象者はAlaアレル保有者と比較して言語性IQが高く(P = 0,005)、とくに、長期記憶を必要とする言語性の下位検査で有意な差がみられた。Alaアレル保有者ではIL-6および可溶性IL-6受容体濃度が高いことが知られており、過剰のIL-6シグナルが長期記憶を必要とする言語性認知能力の獲得に悪影響を及ぼしている可能性が示唆される。
23More severe impairment of manual dexterity in bipolar disorder compared to unipolar major depression
Sasayama D, Hori H, Teraishi T, Hattori K, Ota M, Matsuo J, Kawamoto Y, et al.
J Affect Disord. 136(3):1047-52. 2012.気分障害の患者では多くの認知機能障害がみられる。しかしこれまでに器用さを検証した論文はない。今回我々は単一うつ病、双極性障害および健常者を対象に器用さを検証した。
24Possible impact of ADRB3 Trp64Arg polymorphism on BMI in patients with schizophrenia
Sasayama D, Hori H, Teraishi T, Hattori K, Ota M, Tatsumi M, Higuchi T, et al.
Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 38(2):341-4. 2012.β3アドレナリン受容体遺伝子(ADRB3)Trp64Arg多型は肥満、2型糖尿病、心血管系疾患に関連することが過去に報告されている。これらの疾患のリスクは、一般人口よりもうつ病や統合失調症の患者において高いことから、我々はTrp64Argがうつ病や統合失調症にも関連している可能性があると考え、関連研究を行った。統合失調症患者504名、大うつ病性障害患者650名、健常者1170名に対しTrp64Argのタイピングを行ったが、遺伝子型およびアレル頻度は、各群間において統計学的に有意差を認めず、Trp64Argと統合失調症およびうつ病との関連を示すことはできなかった。一方で、body mass index (BMI)が記録されていた125名の統合失調症患者において、Argアレル保有者は非保有者と比較して平均BMIが有意に高く(保有者:26.5±6.9, 非保有者:23.8±4.3; P = 0.019)、肥満(BMI ≧ 25)の率も有意に高かった(保有者:52.3±7.5 (%), 非保有者:32.1±5.2 (%); P = 0.027)。
25Dystrophic neurites express C9orf72 in Alzheimer's disease brains
Satoh J, Tabunoki H, Ishida T, Saito Y, Arima K.
Alzheimers Res Ther. 4(4):33. 2012.C9orf72遺伝子の第一イントロンのhexanucleotide GGGGCC repeatはFTDとALSの遺伝的な原因の一つであることが報告されている。我々はアルツハイマー病と対照脳を抗C9orf72抗体(sc-138763とHPA023873)で免疫組織化学的に検索し、アルツハイマー病の変性軸索(特に老人斑周囲の変性軸索)が陽性を示すことを見出した。
26Immunohistochemical characterization of gamma-secretase activating protein expression in Alzheimer's disease brains
Satoh J, Tabunoki H, Ishida T, Saito Y, Arima K.
Neuropathol Appl Neurobiol. 38(2):132-41. 2012.アルツハイマー病脳(11例)の前頭葉皮質と海馬のγ-secretase activating protein (GSAP)発現を免疫組織化学的に検索し、顆粒状、結節状、斑状の陽性構造を見出した。陽性構造は、neuropil と神経突起(特に海馬 CA2 とCA3領域)に認められた。
27Characterization of the Asian myopathy patients with VCP mutations
Shi Z, Hayashi YK, Mitsuhashi S, Goto K, Kaneda D, Choi YC, Toyoda C, et al.
Eur J Neurol. 19(3):501-9. 2012.VCP変異はIBMPFDの他、家族性ALSの原因でもある。これまでに報告されているアジア人VCP変異は1例のみでありまれな疾患と考えられていた。我々は縁取り空胞を伴うアジア人ミオパチー154家系についてVCP変異をスクリーニングし、6家系7人(4%)に変異を認めた。神経筋症状はこれまでに報告されているものより多彩である一方、骨病変の合併はまれであったことから、報告例が少なかった者と考えられた。筋病理学的には、筋原性変化とともに神経原性変化を認め、早期の核およびミトコンドリア異常が重要所見であることを新たに明らかにした。
28A homozygous mutation of C12orf65 causes spastic paraplegia with optic atrophy and neuropathy (SPG55)
Shimazaki H, Takiyama Y, Ishiura H, Sakai C, Matsushima Y, Hatakeyama H, Honda J, et al.
J Med Genet. 49(12):777-84. 2012.日本痙性対麻痺研究コンソーシアム、筑波大学、山梨大学、東京大学との共同研究で、痙性対麻痺病型55(SPG55)の原因遺伝子がC12orf65であることを報告した。本遺伝子の産物はミトコンドリアDNAの翻訳終結に関わることが知られており、ミトコンドリア病の症例で遺伝子変異が報告されており、ミトコンドリア機能異常と痙性対麻痺の関連を示すものとして興味深い。
29Teaching NeuroImages: unilateral arm and contralateral leg amyotrophy in FSHD: unusual presentation
Sugie K, Hayashi YK, Goto K, Nishino I, Ueno S.
Neurology. 79(5):e46. 2012.現43歳で、23歳発症の顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー男性患者を呈示した。本患者においては左下肢と右上肢の著明な筋萎縮が認められた。本例のような障害パターンは希であるが、非対称性の筋障害は顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーの特徴である。
30Positive association between STAT4 polymorphisms and polymyositis/dermatomyositis in a Japanese population
Sugiura T, Kawaguchi Y, Goto K, Hayashi Y, Tsuburaya R, Furuya T, Gono T, et al.
Ann Rheum Dis. 71(10):1646-50. 2012.Signal transducer and activator of transcription 4 (STAT4)遺伝子は、様々な自己免疫疾患の発症リスクと関連していることが知られている。460名の多発筋炎/皮膚筋炎患者と680名の対照群のSTAT4遺伝子解析を行ったところ、MEGF10遺伝子のrs7574865T多型の頻度が多発筋炎/皮膚筋炎患者で有意に高いことが明らかとなった。
31Muscle glycogen storage disease 0 presenting recurrent syncope with weakness and myalgia
Sukigara S, Liang WC, Komaki H, Fukuda T, Miyamoto T, Saito T, Saito Y, et al.
Neuromuscul Disord. 22(2):162-5. 2012.世界で3家系目となる糖原病0型(GSD0)の患者を報告した。5歳時より労作後失神を繰り返し、12歳で死亡した。11歳時の筋生検でグリコーゲンが消失していたこと、GYS1遺伝子に変異を認めたことからGSD0の診断を確定した。失神は比較的ゆっくり起こり約1時間継続していたことから、GSD0における意識消失発作は、単なる心原性失神では無いことが示唆された。
32Myopathy associated with antibodies to signal recognition particle: disease progression and neurological outcome
Suzuki S, Hayashi YK, Kuwana M, Tsuburaya R, Suzuki N, Nishino I.
Arch Neurol. 69(6):728-32. 2012.抗SRP陽性ミオパチーは急性の強い筋力低下、血清CK値の著高、ステロイド不応性の自己免疫性筋疾患である。我々は本邦抗SRP抗体ミオパチー27例について、その臨床経過を詳細に解析した。その結果、18,5%は筋ジストロフィーと鑑別困難な慢性の経過をとり、筋萎縮も進行性で予後不良であった。抗SRP抗体ミオパチーの臨床経過はきわめて多彩であることを明らかにした。
33Novel AGTR2 missense mutation in a Japanese boy with severe mental retardation, pervasive developmental disorder, and epilepsy
Takeshita E, Nakagawa E, Nakatani K, Sasaki M, Goto Y.
Brain Dev. 34(9):776-9. 2012.アンギオテンシンIIタイプ2受容体遺伝子(AGTR2)の変異例が精神遅滞を引き起こすことが報告された。当院の1例で、同遺伝子の変異例を同定し、本邦初例として報告した。
34Acid phosphatase-positive globular inclusions is a good diagnostic marker for two patients with adult-onset Pompe disease lacking disease specific pathology
Tsuburaya RS, Monma K, Oya Y, Nakayama T, Fukuda T, Sugie H, Hayashi YK, et al.
Neuromuscul Disord. 22(5):389-93. 2012.ポンペ病特有の筋線維内空胞性変化を欠く2例の成人型ポンペ病例を報告した。両例とも細胞質内に酸フォスファターゼ陽性の封入体を有していた。後方視的に検討したところ、同様の封入体は小児例・成人例の大半に認められた。従って、酸フォスファターゼ陽性封入体は特に診断が難しいとされる成人型の診断に有用であると考えられる。

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2011年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1Possible association of the semaphorin 3D gene (SEMA3D) with schizophrenia
Fujii T, Uchiyama H, Yamamoto N, Hori H, Tatsumi M, Ishikawa M, Arima K, et al.
J Psychiatr Res. 45(1):47-53. 2011.プレキシン-セマフォリンのシグナル伝達は神経機能に広く係わっていることが知られている。プレキシンA2遺伝子と統合失調症との遺伝学的相関が見いだされたので、セマフォリン3D遺伝子(SEMA3D)との相関を検討した。その結果、4個のマーカーが強い相関(p=0,00001)を示し、統合失調症の罹患性に関わる事が明らかになった。
2Support for association between the Ser205Leu polymorphism of p75(NTR) and major depressive disorder
Fujii T, Yamamoto N, Hori H, Hattori K, Sasayama D, Teraishi T, Hashikura M, et al.
J Hum Genet. 56(11):806-9. 2011.われわれは先行研究において、ニューロトロフィン共通の低親和性受容体であるp75(NTR)にSer205Leu多型を見出し、大うつ病と関連することを報告した。今回、独立の比較的大きなサンプルで再現性を検討したところ、特に女性において関連を支持する結果が得られた。
3Myopathy and neurogenic muscular atrophy in unexpected cardiopulmonary arrest
Kawashima H1, Ishii C, Yamanaka G, Ioi H, Nishimata S, Kashiwagi Y, Takekuma K, et al.
Pediatr Int. 53(2):159-61. 2011.心肺停止状態で来院した4例の神経・筋疾患罹患乳児を提示した。このうち2例は突然死の前に筋力低下を呈していなかった。このことは、乳児の突然死では、原因として、神経・筋疾患の可能性も考慮する必要があることを示唆している。
4Inflammatory changes in infantile-onset LMNA-associated myopathy
Komaki H, Hayashi YK, Tsuburaya R, Sugie K, Kato M, Nagai T, Imataka G, et al.
Neuromuscul Disord. 21(8):563-8. 2011.LMNA変異は様々な疾患の原因と成る。我々は、LMNA変異による乳児期発症ミオパチーでは筋炎と鑑別困難な炎症性の筋病理変化を高頻度に見出すことを明らかにした。ステロイド治療に反応する例も半数に認められた。経過を追うにつれ、心症状、関節拘縮などの症状もみいだされ、LMNA変異による筋ジストロフィーの特徴を満たすようになる。乳児筋炎ではLMNA変異の有無を確認することが、予後規定因子である心症状の早期発見につながり、重要である。
5Muscle choline kinase beta defect causes mitochondrial dysfunction and increased mitophagy
Mitsuhashi S, Hatakeyama H, Karahashi M, Koumura T, Nonaka I, Hayashi YK, Noguchi S, et al.
Hum Mol. Genet. 20(19):3841-51. 2011.コリンキナーゼ欠損マウスの骨格筋筋線維では、ミトコンドリアの巨大化と部分的な消失が見られるが、このマウスのミトコンドリアにおいて、ミトコンドリア膜リン脂質の組成変化、ミトコンドリア機能の障害、およびミトコンドリア特異的オートファジー(ミトファジー)が見られることを始めて報告した。リン脂質合成経路の酵素欠損により、ミトコンドリアの機能異常を来たすことを示した。エクソン・アレイを用いることで、筋強直性ジストロフィー1型(DM1)の骨格筋において、マオメシン1(MYOM1)遺伝子のエクソン17aがmRNAに取り込まれることを明らかにした。この取り込みはMBNL1-3のみならずCELF1-2でも抑制された。一方、CUGリピート伸長により、MBNL1のMYOM1ミニジーンに対する効果は阻害されたが、CELF1の効果は阻害されなかった。このことは、DM1筋においては、MBNLの抑制がMYOM1エクソン17aの異常スプライシングを惹起していることを示唆している。
6A congenital muscular dystrophy with mitochondrial structural abnormalities caused by defective de novo phosphatidylcholine biosynthesis
Mitsuhashi S, Ohkuma A, Talim B, Karahashi M, Koumura T, Aoyama C, Kurihara M, et al.
Am J Hum Genet. 88(6):845-51. 2011.ミトコンドリア形態異常を伴う新たな先天性筋ジストロフィーを見出し、その原因遺伝子を世界で初めて明らかにした。この遺伝子は、リン脂質の一つホスファチジルコリンを合成する酵素、コリンキナーゼ・ベータ(CHKB)をコードしており、この酵素が骨格筋で欠損することで重篤な筋ジストロフィーを引き起こすことが、初めて明らかになった。これは、ホスファチジルコリン合成酵素欠損による初めてのヒトの疾患である。
7A polymorphism of the ABCA1 gene confers susceptibility to schizophrenia and related brain changes
Ota M, Fujii T, Nemoto K, Tatsumi M, Moriguchi Y, Hashimoto R, Sato N, et al.
Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 35(8):1877-83. 2011.中枢神経系においてコレステロール輸送を司るABCA1をコードする遺伝子多型の1つ(rs2230808)が男性において統合失調症リスクと関連し(556名の男性患者と594名の男性健常者のサンプルで検討)、MRIで測定した灰白質体積の減少と関連することを初めて報告した。
8Neocortical layer formation of human developing brains and lissencephalies: consideration of layer-specific marker expression
Saito T, Hanai S, Takashima S, Nakagawa E, Okazaki S, Inoue T, Miyata R, et al.
Cereb Cortex. 21(3):588-96. 2011.ヒト脳発達過程における大脳皮質の層形成がどのようにできるかを明らかにした。齧歯類の報告と類似していたが、それぞれの層特異的タンパクが広範に発現していることが分かった。また、大脳皮質形成異常症である滑脳症の形成過程を明らかにした。
9Extramuscular manifestations in children with severe congenital myopathy due to ACTA1 gene mutations
Saito Y, Komaki H, Hattori A, Takeuchi F, Sasaki M, Kawabata K, Mitsuhashi S, et al.
Neuromuscul Disord. 21(7):489-93. 2011.骨格筋型アクチンをコードするACTA1遺伝子変異を伴う3例の優性遺伝性乳児重症型ネマリンミオパチーを報告した。3例とも精神発達遅滞を示すとともに、前頭葉形成不全と脳室拡大を認めた。さらに1例では、骨形成不全、肝腫大、尿管閉鎖などの多発先天性奇形を伴っていた。これらの結果は、胎生期に筋外に発現する骨格筋型アクチンに何らかの機能的役割があることを示している。
10Absence of small-vessel abnormalities in alternating hemiplegia of childhood
Sasaki M, Matsufuji H, Inui T, Arima K.
Brain Dev. 33(5):390-3. 2011.小児交互性片麻痺の微小血管異常の有無を電顕を用いて病理学的に検討したが、異常を見出し得なかった。
11Modulation of cortisol responses to the DEX/CRH test by polymorphisms of the interleukin-1beta gene in healthy adults
Sasayama D, Hori H, Iijima Y, Teraishi T, Hattori K, Ota M, Fujii T, et al.
Behav Brain Funct. 7:23. 2011.健常成人179名に対しDEX/CRH負荷試験を行い、さらに、IL-1β遺伝子の5個のタグSNPをタイピングした。IL-1β遺伝子rs16944のGアレルとrs1143633のAアレルがDEX投与後のコルチゾール値の高値と有意な関連を示した。DEXによるコルチゾールの抑制にIL-1β遺伝子が影響を与えていたことから、IL-1βがHPA系の機能に関与していることが示唆された。
12Possible association between interleukin-1beta gene and schizophrenia in a Japanese population
Sasayama D, Hori H, Teraishi T, Hattori K, Ota M, Iijima Y, Tatsumi M, et al.
Behav Brain Funct. 7:35. 2011.統合失調症患者533名と健常対象者1136名において、IL-1β遺伝子の5個のタグSNPをタイピングしたところ、IL-1β遺伝子rs1143633において患者群とコントロール群でアレル頻度に有意な差が認められた。このことから、IL-1βが統合失調症の病態へ関与している可能性が示唆された。
13Difference in Temperament and Character Inventory scores between depressed patients with bipolar II and unipolar major depressive disorders
Sasayama D, Hori H, Teraishi T, Hattori K, Ota M, Matsuo J, Kawamoto Y, et al.
J Affect Disord. 132(3):319-24. 2011.単極性うつ病患者90名、双極Ⅱ型障害患者36名、健常対照者306名に対し、Temperament and Character Inventory (TCI)を用いて、気質・性格プロファイルを比較した。自己超越および新奇性追求の得点は、女性の単極性うつ病患者と双極Ⅱ型障害患者との間で有意な差があり、両疾患の鑑別に有用である可能性が示唆された。
14Association of interleukin-1beta genetic polymorphisms with cognitive performance in elderly females without dementia
Sasayama D, Hori H, Teraishi T, Hattori K, Ota M, Matsuo J, Kawamoto Y, et al.
J Hum Genet. 56(8):613-6. 2011.99名の高齢健常女性においてWAIS-RにてIQを測定した結果、IL-1β遺伝子rs1143634およびrs1143633の遺伝子型によって言語性IQが有意に異なることが示された。IL-1β遺伝子の多型が高齢女性の認知機能に影響を与えることが示唆された。
15Association of plasma IL-6 and soluble IL-6 receptor levels with the Asp358Ala polymorphism of the IL-6 receptor gene in schizophrenic patients
Sasayama D, Wakabayashi C, Hori H, et al.
J Psychiatr Res. 45:1439-44. 2011.IL-6R遺伝子Asp358Alaの遺伝子型は、統合失調症患者および健常者において血漿IL-6濃度および 可溶性IL-6R濃度と有意な関連を示した。統合失調症患者では健常者と比較して血漿IL-6 濃度が有意に高かったが、可溶性IL-6R 濃度は有意な差を認めなかった。
16Immunohistochemical characterization of microglia in Nasu-Hakola disease brains
Satoh J, Tabunoki H, Ishida T, Yagishita S, Jinnai K, Futamura N, Kobayashi M, et al.
Neuropathology. 31(4):363-75. 2011.Nasu-Hakola病は、骨嚢胞を伴うプレセニリン関連認知症を示すDAP12遺伝子変異で起きる疾患である。遺伝子産物であるDAP12は、脳内ではミクログリアに存在していることから、リサーチ・リソース・ネットワークに登録させれている3例(対照:4例の筋強直性ジストロフィー)の脳を用いて免疫組織化学的に検討を行った。
17Anti-signal recognition particle myopathy in the first decade of life
Suzuki S, Ohta M, Shimizu Y, Hayashi YK, Nishino I.
Pediatr Neurol. 45(2):114-6. 2011.10歳未満発症のSRPミオパチー例2例を報告した。発症年齢はそれぞれ5歳と9歳であった。SRPミオパチーは通常成人が罹患し、10歳未満で発症することは極めて希である。両例とも進行性の筋萎縮を示し、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィーと肢帯型筋ジストロフィーが当初の鑑別診断であった。筋組織学的検索では、壊死・再生線維を認めたが、リンパ球浸潤は認めなかった。進行性筋萎縮を示す小児例においてもSRPミオパチーを鑑別に上げる必要がある。
18Association of ANK3 with bipolar disorder confirmed in East Asia
Takata A, Kim SH, Ozaki N, Iwata N, Kunugi H, Inada T, Ujike H, et al.
Am J Med Genet B Neuropsychiatr Genet. 156B(3):312-5. 2011.ANK3遺伝子が双極性障害と関連することが欧米の全ゲノム解析で報告されており、東アジアでも関連が確認された。
19Late-onset mental deterioration and fluctuating dystonia in a female patient with a truncating MECP2 mutation
Takeshita E, Saito Y, Nakagawa E, Komaki H, Sugai K, Sasaki M, Nezu A, et al.
J Neurol Sci. 308(1-2):168-72. 2011.26歳の精神運動発達遅滞を呈する女性で、MECP2遺伝子変異(c 1196_1200delCCACC (p P399QfsX4))を同定し、Rett症候群と診断した。この患者は、退行が11歳と遅く、変動するジストニアを呈するなど、 Rett症候群としては非典型的な例であった。
20Lobulated fibers in a patient with 46-year history of limb-girdle muscle weakness
Tsuburaya R, Suzuki T, Saiki K, Nonaka I, Sugita H, Hayashi YK, Nishino I.
Neuropathology. 31(4):455-7. 2011.症例は、46年間の経過で緩徐進行性の筋力低下を呈した78歳の男性例。筋病理所見では軽度の壊死・再生所見に加えて多数のLobulated fiberを認めた。臨床経過およびLobulated fiberの存在より肢体型筋ジストロフィー2Aを疑い、遺伝子解析により確定診断に至った。Lobulated fiberは非特異的な慢性筋原性の筋病理所見であるが、特にLGMD2Aの診断における有用性を鑑別診断とともに考察した。
21Novel variants of the SHANK3 gene in Japanese autistic patients with severe delayed speech development
Waga C, Okamoto N, Ondo Y, Fukumura-Kato R, Goto Y, Kohsaka S, Uchino S.
Psychiatr Genet. 21(4):208-11. 2011.重度言語障害・精神遅滞を呈する自閉症患者百数十例におけるゲノム解析から、自閉症関連遺伝子であるSHANK3遺伝子に複数の変異を見いだした。本論文は、DNAメチル化に関与するCpG islandや蛋白質相互作用に重要なPDZドメイン等機能領域における初めての遺伝子変異報告である。

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2010年
No.論文名、演題名等著者、発表者等掲載誌、学会等成果又は特記事項
1Failure to find an association between myosin heavy chain 9, non-muscle (MYH9) and schizophrenia: a three-stage case-control association study
Amagane H, Watanabe Y, Kaneko N, Nunokawa A, Muratake T, Ishiguro H, Arinami T, et al.
Schizophr Res. 118(1-3):106-12. 2010.統合失調症患者340名と健常対象者426名において、13個の22qのマイクロサテライトマーカーとMYH9遺伝子内のSNPとの相関を認め、次いでMYH9遺伝子内の25個のタグSNPを統合失調症患者595名と健常対象者598名でタイピングしたところ、相関を認めた。しかし別の統合失調症患者228名と健常対象者2406名では有意な差を認めなかった。しかし、22q領域の別の遺伝子が統合失調症と何らかの関係があることを否定できない。
2Abnormal maturation of non-dysmorphic neurons in focal cortical dysplasia: immunohistochemical considerations
Hanai S, Saito T, Nakagawa E, Arai A, Otsuki T, Sasaki M, Goto Y, et al.
Seizure. 19(5):274-9. 2010.局在性大脳皮質異形成(FCD)は小児の難治性てんかんで、病理学的に異型神経細胞や巨大細胞があることを特徴とする。治療的切除された標本を用いて、神経細胞に発生学的異常がないかについて免疫組織学的に検討した結果、一見正常な神経細胞でも発生・分化異常があることを突き止めた。
3A genetic variation in the dysbindin gene (DTNBP1) is associated with memory performance in healthy controls
Hashimoto R, Noguchi H, Hori H, Nakabayashi T, Suzuki T, Iwata N, Ozaki N, et al.
World J Biol Psychiatry. 11(2 Pt 2):431-8. 2010.統合失調症患者70例と健常対照165例において、DTNBP1のハプロタイプを検討したところ、記憶障害との相関を認めた。
4Copy-number variations on the X chromosome in Japanese patients with mental retardation detected by array-based comparative genomic hybridization analysis
Honda S, Hayashi S, Imoto I, Toyama J, Okazawa H, Nakagawa E, Goto Y, et al.
J Hum Genet. 55(9):590-9. 2010.国立精神・神経医療研究センターが中心となって行っている精神遅滞研究のまとめの1つで、X染色体をカバーするアレイCGHを144家系に実施し、10家系に病因と考えられるゲノム変化を同定した。
5A 13-year-old girl with proximal weakness and hypertrophic cardiomyopathy with Danon disease
Kim H, Cho A, Lim BC, Kim MJ, Kim KJ, Nishino I, Hwang YS, et al.
Muscle Nerve. 41(6):879-82. 2010.ダノン病の韓国人患者の症例報告
6Reversible infantile respiratory chain deficiency: a clinical and molecular study
Mimaki M, Hatakeyama H, Komaki H, Yokoyama M, Arai H, Kirino Y, Suzuki T, et al.
Ann Neurol. 68(6):845-54. 2010.乳児期に発症し重篤な呼吸障害をきたす程の重症ミオパチーが、その後自然に軽快する良性乳児型シトクロームc酸化酵素欠損症の原因として、ミトコンドリアDNA内の点変異(m 14674T>C, T>G)を同定した。
7Specific phosphorylation of Ser458 of A-type lamins in LMNA-associated myopathy patients
Mitsuhashi H, Hayashi YK, Matsuda C, Noguchi S, Wakatsuki S, Araki T, Nishino I.
J Cell Sci. 123(Pt 22):3893-900. 2010.Aタイプ-ラミンをコードするLMNA遺伝子の変異は、ミオパチー以外に、心筋症、リポジストロフィー、早老症などの病型で認められる。458番目のセリン (Ser458) のリン酸化を認識する抗体を用いて、Ser458のリン酸化障害が骨格筋特異的な臨床症状とリンクすることを示した。
8Disrupted SOX10 regulation of GJC2 transcription causes Pelizaeus-Merzbacher-like disease
Osaka H, Hamanoue H, Yamamoto R, Nezu A, Sasaki M, Saitsu H, Kurosawa K, et al.
Ann Neurol. 68(2):250-4. 2010.ペリツェウス・メルツバッハ病に類似する臨床症状を示した患者で、GJC2遺伝子変異を同定し、転写因子SOX10の機能変化を証明した。
9QTc prolongation and antipsychotic medications in a sample of 1017 patients with schizophrenia
Ozeki Y, Fujii K, Kurimoto N, Yamada N, Okawa M, Aoki T, Takahashi J, et al.
Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 34(2):401-5. 2010.抗精神病薬は心電図上のQTcの延長をきたすことが知られている。本研究では、107人の要約を受けている統合失調症患者におい、QTcを測定した。クロルプロマジンなどの第一世代薬ではQTc延長と相関があったが、オナザピン、抗不安薬、ベンゾジアゼピンなどの第二世代薬ではQTc延長を認めなかった。この結果は、薬剤選択に資すると考える。
10Plasma levels of vascular endothelial growth factor and fibroblast growth factor 2 in patients with major depressive disorders
Takebayashi M, Hashimoto R, Hisaoka K, Tsuchioka M, Kunugi H.
J Neural Transm. 117(9):1119-22. 2010.大うつ病の寛解期にある患者において、神経発生に関係の深いVEGFとFGF-2の血中レベルの検討を行った。FGF-2は正常者と差はなかったが、VEGFは明かなさを認め、特に家族歴を有する患者で高値を示した。
11Congenital myotonic dystrophy can show congenital fiber type disproportion pathology
Tominaga K, Hayashi YK, Goto K, Minami N, Noguchi S, Nonaka I, Miki T, et al.
Acta Neuropathol. 119(4):481-6. 2010.DMPKのCTGリピートの高度延長をもつ先天性筋強直性ジストロフィー(CDM)は特徴的な筋病理所見を示す。CDMでありながら、筋線維タイプ不均等症(CFTD)の病理所見をもつ症例を経験した。そこで20例のCFTDの検討行ったところ、4例(14%)でCTGリピート延長を認めた。

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